10月15日の夜7~8時は、世界中で多くのキャンドルが灯され、お空の赤ちゃんを想う人たちがSNSなどでつながる(撮影/写真部・張溢文)
10月15日の夜7~8時は、世界中で多くのキャンドルが灯され、お空の赤ちゃんを想う人たちがSNSなどでつながる(撮影/写真部・張溢文)

 赤ちゃんの死。その悲しみは周囲に理解されにくく、孤立する人も少なくない。赤ちゃんを亡くした「天使ママ」に生きる力を取り戻してもらいたいと、当事者たちが立ち上がった。

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 ピンクリボンは乳がんの早期発見・啓発。グリーンリボンは移植医療の普及。さて、ピンク&ブルーリボンは何のシンボルか、ご存知だろうか。

 実は、毎年10月9日から15日は赤ちゃんを亡くした家族のための国際的な啓発週間「Baby Loss Awareness Week」で、その啓発カラーがピンクとブルーなのだ。

 この期間は流産や死産、新生児死で亡くなった赤ちゃんに想いを寄せ、家族に幸せをくれた赤ちゃんをたたえると共に、タブー視されがちな「赤ちゃんの死」への理解を広め、大切な命を失った家族への支援の必要性も知らせる機会になっている。

 啓発週間最終日の15日の夜7時から8時は、各家庭などでキャンドルに火を灯して“お空にいる”赤ちゃんを想う時間だ。インスタなどSNSで「#waveoflight」や「#BLAW」といったタグをつけて投稿し、優しい想いを共有するという。

 国内ではほとんど知られていない啓発週間を日本でも広めようと、今年、赤ちゃんを亡くした天使ママたちが活動を始めた。

 神戸市に住む小原弘美さん(40)は2017年7月、出産予定日を過ぎた41週の健診で、おなかの赤ちゃんの心拍が確認できないと告げられた。その後、陣痛促進剤を使い、3日かけて亡くなった息子を産んだ。

 昨年10月、インスタでつながったイギリス在住の天使ママを通じて啓発週間を知った。海外ではこの期間、たくさんのランドマークがピンクとブルーにライトアップされるなど盛んに啓発されていて、驚いた。

 一方、日本では赤ちゃんの死を語る場は少なく、家族や友人にもつらい想いを明かせずに苦しんでいる人がたくさんいる。厚生労働省の人口動態統計によると、2017年には死産が2万358件あった。同年の出生数が94万6065件だったので、約50人に1人が死産している計算だ。死産の大半は予測がつかず、年齢に関係なく誰にでも起きる可能性があるが、こうした現状は知られていない。

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支援からすり抜ける「天使ママ」