稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
経産省が作成したポスター。キャッシュレス決済によるポイント還元の対象店ということを示す(経済産業省提供)
経産省が作成したポスター。キャッシュレス決済によるポイント還元の対象店ということを示す(経済産業省提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】経産省が作成したポスター

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 消費税アップが間近に迫り、もう我ながらいい加減にしたいと思いつつ、やはり口を出さずにいられないキャッシュレスポイント還元(キャッシュレスで買い物すると最大5%が還元される)問題。

 経済産業省によると、対象となる中小店舗のうち参加するのは今のところ3割程度という。大臣は想定よりはるかに多いというが、消費者からすれば多いとは言えないだろう。参加店は少数派でありスペシャルである。

 なぜ少ないかといえば、そもそも昔ながらの小さな店は高齢者の客が多くキャッシュレスのニーズがないのだ。そして客だけでなく店主も高齢化している。私が日々世話になっている豆腐屋はそもそもレジがなかったりする。つまりはキャッシュレスに対応できるのは、大手がバックについているフランチャイズなどに偏っていくことになる。

 これで中小店舗の支援、と言えるのだろうか?

 それとも「時代についていけない店」はどうでもいいのだろうか。私はそうは思わない。こうした店は地域のハブである。いつもの客が集い、店主と世間話をして愚痴もこぼし、笑顔で別れる。これ全てプライスレス。足が弱くなっても歩いていける範囲に馴染みの店があり話し相手がいることが、どれほど地域の健康と福祉に貢献していることか。むしろ時代が必要とする店である。

 経産省は、キャッシュレス対応の店には「5%還元」などの広報ポスターを配るらしい。割引を利用したい人には便利に違いない。しかしその結果、対応店舗に客が流れることになれば、対応できぬ店にはその分、税金でもって打撃を与えることとなる。繰り返すが、これが本当に中小店舗の支援と言えるのか。

 やはり税の基本は公平であるべきだと私は強く思う。そして私が払った税金は、高齢化社会への対応、保育所の増設など、本当に必要なところに大事に使ってほしい。キャッシュレスが経済を活性化するなら、お国が支援などせずとも企業が対応すればいいし、実際対応してると思うんだけど。

AERA 2019年9月23日号

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稲垣えみ子

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稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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