グミが酒を吸って独特の食感になり、漬け込んだ酒も炭酸で割って飲むと、これまたおいしいと評判だ。漬けたグミをあしらえば、見た目も美しい。

 記者もコロロの白ワイン漬けを試してみたが、なるほど、白ワインを吸ったコロロはいつもより格段にみずみずしい! キンキンに冷やせば、つまみにも大人のおやつにもなりそうだ。

 グミと酒の相性はいいらしい。グミを使ったカクテルもある。「クラフトカクテルトーキョー」(池袋)では、SNSで人気になる前から、グミを使ったカクテルを出している。代表の坂本大輔さん(32)のポリシーは、「従来のカクテルだけでないユニークなメニューを揃え、バーに慣れていない人にもカクテルの面白さを伝える」こと。

 グミカクテル以外にも、キャラメル味のポップコーンを漬けたラム酒を使った、見た目は映画館のポップコーンそのままの「ポッピングシネマ」、象さんのジョウロに入ったミルクカクテルをシリアルに注ぐ「発芽byグラノーラ」など、ユニークなカクテルがメニューに並ぶ。店はビルの7階にあり、厚いドアから中は窺えないが、「SNSで見たものを目指して来られるので、立地などは関係ないようです。20代前半の女性が多いですね」(坂本さん)。

 グミカクテルは、「食べるカクテル」を作りたいと、坂本さんが考案した。グミを漬ける酒はジンだ。ウォッカ、日本酒、リキュールなどあらゆる酒を試したが、ジンが一番合った。1日漬け込む。取材時は、来たるハロウィーンのためにタランチュラのグミを使ったが、その時々でハリボーだったり、フルーツの形状のものだったり、種類もさまざまだ。グミの酒漬けをつくるコツを聞いてみた。

「自宅で作るなら、漬ける酒は好みでOK。フルーツ味のグミの方がおいしくできるでしょう」(同)

 まさか、菓子と酒がここまで合うとは……。記者は甘いものがあまり得意ではないので、及び腰だったが、味わってみるといずれも「なかなかイケる!」というのが、率直な感想だ。

 プロはどう見ているのか?

 15周年を迎えた「ピノサリーチェ」(東京・渋谷)のソムリエで、元バーテンダーの福田浩司さん(43)によると、サワーでもカクテルでもワインと料理との組み合わせでも、甘みや酸味などの味のバランスを崩さないことがカギになるという。

 そういえば、駄菓子サワーもわたあめカクテルもグミの酒漬けも、甘い、酸っぱいの度合いが絶妙だった。

「私たちは『経験したことがある味』をおいしいと感じる傾向があります。そういう意味でも、子どものころに食べたことがある駄菓子を使ったサワーやカクテルは、とっつきやすく、舌に馴染みやすいのでしょう。加えて、見た目の美しさはお酒の味を決める上で重要です。お酒作りの理にかなったものかもしれませんね」(福田さん)

 味もよし、見目も麗し。今晩はどのお菓子酒を飲もうかな。(ライター・羽根田真智)

AERA 2019年9月23日号より抜粋