同実行委員会は、A4サイズで20ページにわたる対応マニュアルと9ページ分の想定問答集を整備。事務局の代表番号に「この通話は録音している」旨のメッセージを流す自動音声対応機能を付け、電話の増設などの事前準備をしていた。だが、想像を上回る数の抗議電話によって、対応できない状況になったという。

 では、いわゆる「電凸(でんとつ)」と呼ばれるこういった事態が起こった際に、不当な要求に屈しないため、また現場で対応にあたるスタッフが疲弊しないためにどうすればよいのか。企業のクライシス・リスクマネジメントを専門的に手掛けるエス・ピー・ネットワーク総合研究部の西尾晋(しん)部長(上席研究員)はこう話す。

「(電凸対応として)よく『電話を切っていいんですか』と聞かれるのですが、切らないとダメですと言っています」

 まずは、電話を切る際のロジックを決め、それを現場に周知徹底し、切り方もレクチャーすることが重要だ。担当者の個人名を晒すのは常套手段なので、「名前を名乗れ」と言われてもフルネームを名乗る必要はないし、名乗る必要がないケースもある。一方、電凸をする側には「ご意見として承ると言って流されることが多いので、抗議ではなく徹底的に質問しろ」というインターネット上の書き込みもあるという。これは質問攻めで電話を切らせないという手法だが、回答する義務はないので「ご意見承りました」と言って電話を切るなどの対応が望ましい、と西尾部長は言う。

 何度も電話がかかってくる場合は、「他の方のお電話がつながらなくなり迷惑になります。公務に支障が出るのでやめていただけませんか」と伝えて切ってよい。その際、電話の回数や時間などは記録しておくこと。問い合わせ窓口とは別の番号にかかってきた場合は、「ここは担当窓口ではないので」と言って専用窓口を案内。専用窓口を設けているにもかかわらず別の番号に電話をかけてくるのは業務妨害にも当たりうるので警察に相談・連携するとよいと、西尾部長は指摘する。

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