最速163キロで注目される佐々木朗希は、打撃も非凡だ=岩手県営球場 (c)朝日新聞社
最速163キロで注目される佐々木朗希は、打撃も非凡だ=岩手県営球場 (c)朝日新聞社

 履正社の初優勝にわいた夏の甲子園。だが球児たちの戦いはまだ終わらない。ライバルがチームを組むU-18W杯。本当に一番すごいのは、誰だ。

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 全国高等学校野球選手権大会の優勝校、履正社・岡田龍生監督の第一声は、今年のチームを端的に表し、同時に、敗れた星稜をたたえる言葉だった。

「星稜さんがチームを大きくしてくれました」

 就任32年の岡田監督は名将と呼ばれながら、日陰の人だった。全国一の激戦区で大阪桐蔭と二強をなしてきたが、夏の地方大会では最大のライバルに11連敗中(今夏は対戦がなかった)。初の甲子園制覇がかかった2017年春の選抜決勝でも大阪勢対決で涙をのみ、昨夏の北大阪大会準決勝では9回二死まで追い詰めながら、逆転を許した。

 このときのスターティングメンバーには、井上や左の大砲である小深田大地、主将で捕手の野口海音、先頭打者の桃谷惟吹ら今年の代の中心選手も名を連ねていた。主将の野口には、あの試合で学んだ教訓がある。

「一球の怖さ、あと1アウトの難しさ、です」

 およそ1年1カ月後の星稜戦で決勝打を放ったのは、この野口だった。

 熱戦を終えた球児たちが次に挑むのが、8月30日に開幕するU-18ワールドカップ(韓国・機張)だ。なぜか優勝した履正社からはひとりも選ばれなかったが、星稜の奥川と山瀬は高校日本代表として世界一を目指す。

 若きサムライ戦士の中で、奥川と共に投手の柱として期待されるのが、「令和の怪物」こと岩手・大船渡の佐々木朗希だ。

 今年の夏の甲子園を記者席から眺めていてドラフト候補と噂の投手であっても物足りなさを感じてしまったのは、佐々木の存在が大きい。最速163キロの直球に加え、縦横のスライダーに落ちるボールと多彩な変化球もある。

 岩手大会決勝の花巻東戦では、國保陽平監督が投手としてだけでなく野手としても佐々木を起用しなかった。甲子園の切符を目前に試合に出ることさえできなかった佐々木は、不完全燃焼のまま夏を終わらせるわけにはいかないだろう。

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