奥川、佐々木と共に「高校四天王」とされる創志学園(岡山)の西純矢にとっても、W杯は甲子園に出られなかった屈辱を晴らす舞台だ。昨夏、マウンド上で雄たけびをあげすぎてお灸を据えられた西も、1年を経て大人の投手に。闘志を秘めつつ強気なピッチングはクローザー向きかもしれない。

 終盤の緊迫した場面でマウンドに上がっても表情を変えず、球速も150キロに達した選抜準優勝投手・飯塚脩人(習志野・千葉)も先発、中継ぎ、抑えとマルチの活躍が期待される。左投手では、沖縄大会決勝で延長13回までに229球を投げ、最後は押し出し四球に泣いた宮城大弥(興南)や、近江(滋賀)の技巧派左腕・林優樹が選出された。

 打撃陣では、選抜王者・東邦(愛知)のエースで、野手としてプロ入りを目指す石川昂弥が三塁を守り、主軸となる。ただ、それ以外のポジションに関しては永田裕治監督らの選考にやや不可解な点も。八戸学院光星(青森)のリードオフマン・武岡龍世や花咲徳栄(埼玉)の韮沢雄也ら、遊撃手ばかり6人も選出されているのだ。二塁と一塁を本職とする選手はおらず、外野手登録は東海大相模(神奈川)の鵜沼魁斗と作新学院(栃木)の横山陽樹という2人の2年生だけだ。一発を期待できる選手も少ない印象がある。

 もちろん遊撃の選手に二塁を守らせたり、投手に外野を守らせたりする腹づもりだろうが、昨年はあの小園海斗(現広島)ですらエラーが相次ぎ、急造チームの難しさを露呈した。

 永田監督にはぜひ、佐々木を外野手あるいはDHとして起用してもらいたい。強肩は無論のこと、スイングスピードもまた異次元。4月の仙台育英(宮城)との練習試合では、今夏の甲子園を沸かせたスーパー1年生・笹倉世凪から特大の一発を放ち、岩手大会の盛岡四戦では延長12回に勝ち越しの2ランを放ち勝負を決めた。50メートルを5秒台で走る足も、必ず武器となる。W杯でも、佐々木の起用法には注目だ。(文中一部敬称略)

(ノンフィクションライター・柳川悠二)

AERA 2019年9月2日号