動物たちの生きざまを通じ、“サークル・オブ・ライフ”のメッセージを届ける「ライオン・キング」。世界で大ヒット中のこの映画は、最先端技術を駆使して作られた。
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ディズニーの最新作「ライオン・キング」が世界では7月の公開後3週間で興行収入10億ドルを超え、大ヒットしている。
1994年の大ヒットアニメのリメイクで、「超実写版」と呼ばれるが、実際にはフルCG。ただし、全編をコンピューター上で制作したわけではない。まずラフなアニメーションを作成。これを「バーチャルスタジオ」で見られるように加工したうえで、クルーがVRゴーグルをつけ、本来の光の当たり方などを意識して照明やアングルを決定。それを視覚技術チームに伝えて、細部を詰める、という手の込んだ制作プロセスがとられた。
「映画技術としては、これが最先端だよ」
ジョン・ファブロー監督は胸を張る。
「CGアニメーションだと理論的に完璧な絵はいくらでも作ることができてしまう。今回は本物の撮影監督や本物のカメラが加わったことで人間やカメラの不完全さを再現できた。自然主義リアリズムを追求するためにあえてこの方法をとったんだ」
アフリカの広大なサバンナの描写や小動物の愛らしいしぐさはあまりにリアルで、まるで本物の動物ドキュメンタリーを見ているかのような錯覚に陥る。
「1匹のネズミが水の上を跳びはねていくシーンが完成したときに、まさにBBCの動物ドキュメンタリーみたいで、この映画はうまくいくと確信した。絵というのは幻想だから、幻想の生み出し方を理解するのが大事なんだ。今回の映画はマジシャンが作るだまし絵みたいなものだね」
制作過程ではコンピューターゲームの開発ツールであるゲームエンジンも多用された。ゲーム制作の技術は日進月歩で、映画撮影に応用できるテクノロジーも多いという。
「以前よりも早く、より効率的に、よりリアルな映像が作れるようになった。しかも1億ドルもかからず、テレビ番組程度の予算で作れる。それも含めて今回の技術は最先端なんだ」