ところが、あり得ないことに外務省がこの措置の詳細を知ったのは発表直前だった。同省関係者は「直前まで、3品目が何なのかも知らされていなかった」と証言する。

 今回の輸出規制の強化措置は元々、首相官邸が各省庁に対して、韓国を牽制する案を検討するよう指示したなかで、経済産業省が提出した案だった。

 政府関係者の一人によれば、経産省は韓国の輸出管理体制が不十分だとの考えを持っていた。日本から韓国への輸出品が第三国に流れることを懸念し、16年から日韓協議の開催を求めていた。これに対し、韓国は協議に応じなかったうえ、日本企業3社が韓国に輸出した物品を巡り、第三国に流れた可能性があるとの疑惑も浮上していた。経産省はこうした事情を背景に、首相官邸に「こんな措置も可能です」と輸出規制強化措置を提案したという。

 別の外務省関係者はこうも語る。「確かに過去、我々の韓国に対する外交は甘かった点がある」。日本は過去、韓国との間で漁業交渉や自由貿易協定(FTA)締結交渉などで、韓国側の主張に配慮することが何度もあった。日韓慰安婦合意も、安倍首相が自らの支持者を説得してまで譲歩した内容だっただけに、首相のなかに対韓国外交への不満が渦巻いていたのかもしれない。(朝日新聞編集委員・牧野愛博)

AERA 2019年8月26日号より抜粋