核合意から一方的に離脱し、イランとの緊張を高めたトランプ大統領。有志連合派遣は、いわばマッチポンプだ (c)朝日新聞社
核合意から一方的に離脱し、イランとの緊張を高めたトランプ大統領。有志連合派遣は、いわばマッチポンプだ (c)朝日新聞社

 7月19日、米国はワシントンに60カ国以上の外交官らを招いた。目的は、ホルムズ海峡などの安全確保のための有志連合「海洋安全保障イニシアチブ」について説明することだ。

 説明会には日本の公使も出席し、22日には超タカ派として知られるボルトン米大統領補佐官が来日。河野太郎外相、岩屋毅防衛相などと会談した。その内容は公表されていないが、ボルトン氏が「日米同盟の重要な局面」と述べ、有志連合への参加を求めたことが分かっている。

 米国の構想では、米軍は有志連合の指揮、情報収集等にあたるが戦闘は行わない。タンカーなどの護衛は各国が行うとしている。米国にとっては危険が少なく、安上がりでイラン包囲網を結成できるという、実に虫のよい案だ。

 だが、今回のイランと米国の対立、そしてホルムズ海峡などでの緊張は、ひとえに米トランプ政権が引き起こしたものだ。

 イランの核開発を制約してきた「イラン核合意」は、イランの穏健派ロウハニ大統領政権と、米オバマ政権、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、中国の6カ国による2年あまりの交渉の末、2015年7月14日に締結された。国連安全保障理事会も同月20日の決議2231でこの合意を承認した。安保理決議は全加盟国を拘束するから、法律に近い意味合いを持つ。

 この合意は(1)イランは少なくとも15年間、核兵器に使用できる高濃縮ウランや兵器級プルトニウムを製造しない(2)10トンあった低濃縮ウランを300キロに削減する(3)1万9千基ある遠心分離機を10年間は6104基にする(4)発電用のウランは、核分裂するウラン235の純度を3.67%以下にする──などで、イランが核兵器を造ろうとしても最初の1発を完成させるまでに1年以上かかるレベルに抑えることを目標としている。

 この核開発の制限と引き換えに、欧米諸国はイランに対する経済制裁を解除することが決まった。国際原子力機関(IAEA・天野之弥事務局長、7月18日死去)が16年1月16日、イランが合意を完全に履行していることを確認、経済制裁解除が宣言された。イラン核合意は、重大な難問題を話し合いで解決した模範として国際社会の高い評価を得た。日本もこの合意を支持することを何度も表明している。

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