年齢を重ねると、「体形が変わった」「重力に逆らえない」と口にしてしまいがちだが、山崎さんによると骨格のタイプは20歳から70歳くらいまで、ほとんど変わることはないという。

 自分がどのタイプに当てはまるのかは、自分で正確に判断するのは難しい、と山崎さん。一つの判断基準は「手」だという。

 たとえば、赤ちゃんの手のようなプニプニの手をしている人は「ストレート」であることが多い。白魚のような指、と評されるスッと長い指の持ち主は「ウェーブ」。指の節が太く、指輪が付け根までなかなか入らないという人は「ナチュラル」の傾向が強いという。

 では、それぞれのタイプに合うスタイリングはどのようなものなのか。山崎さんはこんな例を挙げながら、解説してくれた。

「たとえば、河原でゴツゴツした石を拾ったら、新聞紙に包んで持って帰ろう、と思いますよね。逆に小さくて美しい貝殻を拾ったらガラス瓶に入れて持って帰ろうとする。それと同じで質感と素材で調和を取ることが大事なんです」

 筋肉にハリのある「ストレート」なら、同じようにハリのある、シワ加工のない素材が最も調和が取れる。たとえばシルクやカシミヤ。体つきそのものにメリハリがあるので、それを生かすようなラインが望ましい。

 柔らかい印象の「ウェーブ」なら、シフォンなど繊細で柔らかい素材で。ラインも、なだらかな体形に沿うものがいい。

 骨組みがしっかりした「ナチュラル」は、シワ加工のある麻や、ざっくりと編んだニットも無理なく馴染む。一部だけ丈が長いなど、個性を前面に出したラインとも相性がいいという。

 山崎さんに骨格を見てもらった。まず、肩や腰など、体の各部位の骨を触る。次に、素材を首の下にあて質感を見る。出た答えは、「ウェーブ寄りのナチュラル」。なるほど、普段からきちんとしたシャツが似合わない、という実感はあったが、その謎が解明された気がして、清々しい気持ちになる。

 実際に骨格診断を受けた女性たちからは、2パターンの声が聞かれると山崎さん。

「ある程度、自分がどのタイプかわかっていたけれど、後ろ盾がほしかった、という女性もいれば、『ウェーブ』が好きだったけれど、『ナチュラル』と診断されて一瞬たじろぐ方もいらっしゃる。でも、後者の方からは、少し時間が経ってから『まわりに褒められた』とお礼のメールをもらうこともあるんです」

 山崎さんが口にしていた、こんな言葉が忘れられない。

「40代後半の女性が古臭くて似合わないものを着ていると、『発言もなんだか古そうだな』と思われてしまう」

 だからこそ、「骨格」という客観的な指標を理解したうえで、本当に似合う服を日々アップデートしていくことが大事なのだ。

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2019年7月8日号