同社が支援した発達障害者の就職後1年の定着率は95%超。「当事者の努力だけでなく、周囲の理解も不可欠」という。

 発達障害を持つ人の生活を支援するハードウェアの開発に取り組む起業家もいる。早稲田大学卒業後、IT企業勤務などを経て米国にわたり、昨年8月に「HoloAsh (ホロアッシュ)」を起業した岸慶紀CEO(29)だ。

 同社が開発中のAIセラピーのハードウェア「Ashlee(アシュリー)」は、大人のADHDに対応するセラピーの膨大なデータを内蔵。モバイルアプリやスマートスピーカーに浮かび上がるヒト型のホログラムが、スケジュール管理をサポートしてくれたり、落ち込まないよう対話の相手になってくれたりする。

 スケジュール管理が苦手で、精神的に不安定な状態に陥りがちなADHDの人の生活に、実務と精神面で寄り添う機能を実装する。自らもADHDの診断を受けている岸さんは言う。

「24時間アクセスできる相談相手、共感してくれる存在や場所を提供するのが狙いです」

 技術的課題が残るハードウェア「Ashlee」の発売に先んじ、英語版アプリ「Nao.」を今年5月にリリース。日本語版も近くスマホでダウンロードできるよう準備を進めている。「Nao.」について岸さんはこう語る。

「AIアシスタントが相談に乗ってくれるほか、ユーザー同士のポジティブな語り合いを助ける設計も実装しました。発達障害だけでなく、この世の全ての『違い』を持つ人々を救うプロダクトだと考えています」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2019年7月8日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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