しかし「高低」という軸でとらえること自体、もはや今の時代には合わない。そう指摘するのは、同研の松井博代さん(35)だ。結婚の志向は、あこがれ婚から“らしさ婚”や、背伸び婚から“ありのまま婚”へと変わっている。

「上へ引き上げる縦のベクトルから、いまの生活水準や心地良さを継続できる横のベクトルへ。女性の結婚に対する志向は転換しています」(松井さん)

 2017年の同研の調査で「今の彼氏と結婚したいか」を聞いたところ、20代前半の女性では6割が「したい」と回答。若い世代ほど、結婚と恋愛を分けるのではなく、結婚を恋愛の延長上に考えていることがわかった。同研の信川絵里さん(25)は言う。

「まだ見ぬハイスペックの結婚相手を夢見るのでなく、生活レベルや価値観の合う、目の前にいるカレとの確かな生活を送りたいという、現実志向の表れだと思います」

 同研が女性の結婚のキーワードに挙げるのは「3共」。金銭感覚が「共通」で、家事や育児を「共有」でき、仕事観や人生観などを「共感」できるパートナーだ。

「女性たちは自分で目的地を定め、自分の足で、自分のペースで走りたいと思っている。欲しいのは、人生を並走できる良きマラソンランナーです」(信川さん)

 人生100年時代に入り、息切れせず並走できるパートナーと自分らしく暮らす。現実主義で、パートナーに過度に依存しない自立した女性たちの選択が、そこにはある。(編集部・石田かおる)

AERA 2019年7月8日号より抜粋