そしてここからが、6月15日の話だ。陛下と雅子さまの初の地方訪問(6月1、2日)での視察先、愛知県三河青い鳥医療療育センターに入院している7歳の少女・小林咲貴ちゃんと、お二人の交流が朝日新聞夕刊の1面トップになっていた。
咲貴ちゃんは出産時のトラブルがもとで脳性まひを患い、5度の手術を受けた。テレビで即位を祝う一般参賀を見て「そくいおめでとうございます。わたしはリハビリをがんばってます」と手紙を書いた。母の智子さん(41)が「娘が不自由な手で書いた手紙です。無礼を承知で出しました」と投函した。そのような経緯が書いてあった。視察当日、陛下が「お手紙ありがとう。うれしかったですよ」と咲貴ちゃんに声をかけ、雅子さまは「すごく頑張っているのね」と話されたと続いていた。
むやみに感動した。咲貴ちゃんの手紙がきちんとお二人に届き、お二人が咲貴ちゃんと話し、それが記事になった。アエラが雅子さまをめぐる「戦略」の必要を訴えて7年。やっと道筋が見えた。お二人が国民とつながる。それがメディアを通して伝わる。お二人のありのままの姿が、国民に広がっていく。静かだが確かな一歩。そう思い、晴れ晴れとした気持ちになった。
これでもう、こっちのものだ。こっちとはどっちかわからないが、そう思った。とにかく「ゆる公務」で進めばよい、と。
お二人はこれから、どんどん国民とつながるだろう、咲貴ちゃんのように。あとは体調に合わせ、ありのままで歩む。できることはし、できないことはしない。それだけだ。
そう思っているのは、もうアエラだけではない。そう確信している。
(コラムニスト・矢部万紀子)
※AERA 2019年7月1日号より抜粋