映画「旅のおわり世界のはじまり」を完成させた黒沢清監督と主演の前田敦子さん。前田さんは出産後、初のメディア取材。「夫婦」に関する質問を繰り出し、監督はタジタジに──。
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──撮影は2018年。それから1年の間に前田さんは結婚・出産を経験されました。
前田敦子(以下、前田):この映画は私自身が大きく変わるタイミングに出合った作品なんです。脚本の中の人生を実際にいまの自分が歩んでいるようで、すごく不思議なシンクロを体験しました。葉子にはミュージカルの舞台に立つ夢があるけど、日本に恋人がいて、家庭に入る道もあるかもしれない。人は自分次第でどっちの道も選べるし、それによって人生が変わるんだなと、葉子に自分を重ねて思いました。小さな一歩から、見える世界が全然違ってくるんだなって。
黒沢清(以下、黒沢):僕はもちろん前田さんのプライベートは全く知りませんでしたけど、劇中の役柄に近いことを現実でも感じていらっしゃったんでしょうかね。
前田:私、監督ご夫婦が本当に理想なんです。「ああいうふうになりたいなあ」と思って、それが「結婚したい!」「しよう!」につながった気がしています。旦那さん(俳優・勝地涼さん)とも「素敵だよね~」って、よく話していたんです。
黒沢:いやいや(照れまくる)。ご一緒するのは3度目ですけど、より実力のある女優さんになられたと感じました。お母さんになられて、ますます磨かれるかもしれないですね。
前田:まだ出産後に作品に参加していないので、どう変化するかわからないんですけど、私生活では未経験だったことを当たり前にやれるようになってるんです。オムツ替えをしたり、泣いている意味を自然と読み取ったり。「みんなこうやって母になっていくのか……」って。新しい自分に毎日出会えてます。
──お互いに聞いてみたいことはありますか?
黒沢:いつごろから女優になろうと思っていたんですか?
前田:2、3歳のころからドラマが大好きだったんですよね。小学生のときには「このクラスで一番有名になってやる!」って思ってました。理想、ちっちゃいですけど。
黒沢:僕、あれ観てましたよ。ロボットの高校生役の……。