成長の「平均値」が気になったり、他の子と比べて不安になったり……。子育てをしていると、親はいろいろなことに翻弄されます。そこで、「AERA with Kids 夏号」(朝日新聞出版刊)では、「本質行動学」という、あらゆる事象に共通する新しい学問を提唱している西條剛央さんに花まる学習会の高濱正伸先生がインタビュー。「子育ての本質」について話し合いました。

*  *  *

高濱:最初に西條さんの提唱する「本質行動学」について教えてください。

西條:本質行動学は、これまで学校では教えてくれることのなかった新しい学問です。「本質大学」や「本質学部」ってありませんよね。「本質」とは、あらゆる物事に共通し、有効で、役に立つものです。逆に言うと、これを見失ってしまうとすべてがうまくいかなくなるものでもあります。

高濱:本質の対極にあるのが、「形式」。

西條:はい。形式とは、手続きや手段、数字やデータなど、とてもわかりやすいもの、目に見えるものです。学校も企業も、もしかしたら家庭でも、本質よりも形式にものすごく時間をとられてしまっているのが今の世の中です。

高濱:手段や数字が目的化してしまうんですよね。小学校ならテストとか平均点
とか偏差値。大学の研究なら論文の数、会社なら会議、社会でいえばルール……。

西條:クラブ活動もそうかも。私は中・高とソフトテニスに没頭していましたけど、あのころは厳しい練習を積めば積むだけ上達するのだと信じて、練習が目的になっていた。あのころの自分にそうじゃないって言ってやりたい(笑)。

高濱:同じことを私は野球部で(笑)。

西條:でも高濱さんは、今や典型的な本質行動学者ですよ。先日の講演会での公園の話、本質と形式についてのすごくいい例だと思いました。

高濱:ああ、公園の話。そう、公園は、そもそも子どもがのびのびと遊べるパラダイスであって、それが公園の本質です。なのに今の公園は、子どもがしてはいけないルールがたくさんある場所になってしまっている。危ないとかうるさいとかいう理由でね。本質にせまるどころか本質から離れたところで物事が決められてしまうことへの違和感はいろいろなシーンでありますよね。つまり、本質行動学というのは考え方としてとても哲学的ですが、一方で生活のあらゆるシーンで使える現実的なものでもある。

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篠原麻子
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