西條:そうです。本質行動学とは、基礎研究と実践を合わせたものであって、決して観念的ではなく、むしろ実際に役に立つものです。私が2011年に立ち上げた「ふんばろう東日本支援プロジェクト」は、本質行動学の理念に従ってのチーム作りや組織行動でした。支援物資は余っているのに本当に必要な場所に届いていないといったした状況の打破から始めて、被災者が自立できるために本当に必要な支援は何か、そのためにはどうすればいいかを、みんなで建設的なアイデアや代案を出し合って動きました。

高濱:あれは本当に画期的でしたね。西條さんは、それまでボランティアの経験はいっさいなかったんですよね。

西條:はい。でも仙台出身で、あの震災で伯父を亡くしましたし、また、原発事故も起こったしで、とにかく未曽有の事態に何かしなければという思いで動きました。このプロジェクトの目的は、被災者支援ではなく、被災された方々の自立支援で、そのために必要なことを状況と目的に応じて忠実に行動することだったんです。SNSを活用して情報を拡散してくれる後方支援と、前線で活動するボランティアが有機的に次々とつながっていきました。本質さえ間違えなければ、あれだけのことが可能になると実感できたプロジェクトでした。

高濱:その成果が認められて、素晴らしい賞を受賞されたとか。

西條:2014年に「ールデン・ニカ」賞を日本の団体として初受賞しました。そんな賞があることは、そのとき初めて知ったのですが、デジタルメディア界のオスカーのようなものだそうです。ふんばろうプロジェクトは同じ年に発展的解消をしました。組織が目的に到達できれば、もう必要ありませんからね。頑張ってくれたみんなが報われてちょうどよかった。

高濱:私が西條さんに共感したのは、本質とは何かを学問的に体系化できれば、子育てや教育も大きく改革できると思ったからです。教育の現場って決まったものを教えるみたいなところがあるけれど、本当に教えなきゃいけないのは、自分の目で見て考える力です。気づいたことを聞いて言語化していく、メモにして知識を積み重ねていく。そうやって一人ひとりの関心や感性を伸ばしていくのが教育です。なのに現実は、自分の外側にある数字やデータ、価値観を基準にしてしまい、それに翻弄されている。

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