「これでは、アジアは先進国のゴミ箱じゃないか」

 アジア経済研究所の研究員だった小島さんは、99年からアジアのリサイクルに関する本格的な研究を始めた。データだけではつかめない実情を把握するため、毎年10回前後、年間50~80日間、現地調査を繰り返した。

 農閑期の住民が廃棄物の分別、加工などを副業にしているベトナムの村では、廃プラスチック、古紙など種類別に集積地がつくられ、農業を辞めて本業にしている人もいた。日本ではコストが見合わずリサイクルできない廃棄物処理が、途上国では人件費が安いため容易に「産業」として成立する現実を目の当たりにした。一方で、鉛などの汚染物質が発生する実態にも触れ、対策が急務だと感じた。

 アジア諸国の環境汚染問題には日本も深く関わっている。日本では古紙やペットボトルなどの分別収集が進み、国内のリサイクル産業が活性化しているイメージがあるが、回収された使用済み製品は国内で再生利用されるだけではなく、海外にも輸出されている。

「2018年の輸出額は鉄スクラップが年間約3442億円、廃プラスチックが約434億円、古紙が約841億円に上りました」(小島さん)

(編集部・渡辺豪)

AERA 2019年5月27日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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