汚れた廃プラスチックの輸出入規制を議論したバーゼル条約締約国会議。日本などが主導し、規制が採択された/10日、スイス・ジュネーブ(写真:環境省提供)
汚れた廃プラスチックの輸出入規制を議論したバーゼル条約締約国会議。日本などが主導し、規制が採択された/10日、スイス・ジュネーブ(写真:環境省提供)
廃プラスチックのリサイクルが盛んなベトナム・フンイエン省のミン・カイ村。大量の廃プラスチックが散乱したまま放置されていた/2011年1月(写真:小島道一さん提供)
廃プラスチックのリサイクルが盛んなベトナム・フンイエン省のミン・カイ村。大量の廃プラスチックが散乱したまま放置されていた/2011年1月(写真:小島道一さん提供)
小島道一(こじま・みちかず)/1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。カリフォルニア大学バークリー校で修士号取得。2018年3月、日本貿易振興機構からERIAに出向。著書に『リサイクルと世界経済』(中公新書)など(写真:本人提供)
小島道一(こじま・みちかず)/1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。カリフォルニア大学バークリー校で修士号取得。2018年3月、日本貿易振興機構からERIAに出向。著書に『リサイクルと世界経済』(中公新書)など(写真:本人提供)

「汚れた廃プラスチック」の輸出入を規制する条約改正案がスイスで開かれた国際会議で採択された。採択を主導した日本代表団のメンバーは、先進国が輸出した廃プラチックのリサイクルについて、アジアの途上国で何年も現地調査を繰り返してきた。

【写真】大量の廃プラスチックが散乱したまま放置されていたミン・カイ村

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 スイスで開かれた、有害廃棄物の国境を越えた移動を規制するバーゼル条約の締約国会議。5月10日に「汚れた廃プラスチック」の輸出入を規制する条約の改正案が採択された瞬間、環境省大臣官房審議官の松澤裕さん(55)は議場で安堵の表情を浮かべた。松澤さんは日本代表団団長として、採択を主導した。

「今回の改正により、各国はプラスチックごみ対策のためのツールを得ました」

 松澤さんが全体会議の最後にそうスピーチすると、各国の参加者から拍手が鳴り響いた。

 この瞬間を、ひときわ感慨深く見守る人がいた。インドネシアのジャカルタにある東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)のシニアエコノミスト、小島道一さん(53)だ。

「さまざまな種類の廃プラスチックが日本など先進国から中国や東南アジアに輸出され、野焼きされたり、不適正に投棄されたりする状況が続いてきました。途上国で汚染を引き起こす国際貿易を防止する措置が必要と考えていましたが、今回の採択はその一歩につながると期待しています」(小島さん)

 2004年以降、研究者の立場でバーゼル条約の締約国会議に出席し、今回も日本代表団のアドバイザーとして同行した小島さんは、ライフワークとしてアジアのリサイクル問題に向き合ってきた。

 関心を持ったきっかけは、1990年に台湾が廃鉛バッテリーの輸入を禁止したことだ。この措置は、日米などが台湾に輸出した車の廃バッテリーが、リサイクルの過程で鉛汚染を起こしたことが引き金になった。

 台湾の措置を受け、先進各国はインドネシアなど規制の緩い国への輸出を急増させた。インドネシアでは92年、欧州などから来た廃プラスチックなどを積載したコンテナハウスが複数の港で引き取られず、置き去りにされる事件が起きた。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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