※写真はイメージです
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 LGBT当事者が周囲にカミングアウトをしたくてもできない環境がまだあることがわかった。制度や知識は広まってきたが、安心して自分をさらけ出せる社会には至っていない。何が問題なのか。

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 カミングアウトをするかしないかは個人の自由だ。強制するものでもされるものでもない。問題は、職場ではその自由が奪われていることだ。

 就活生にもその自由がないことがわかった。LGBTの就職活動を支援するNPO法人「ReBit(リビット)」が昨年行った調査で、LGBTを自認する人の78%が応募した企業に全くカミングアウトしていないと答えた。理由として、「差別やハラスメントを受けるかも」(70・8%)、「採用結果へ悪影響があるかも」(68・9%)などがあがった。

 地方の国立大学4年生のレズビアンの女性(21)は就活中に何度、息苦しい思いをしたかわからない。

 面接で「最近気になる社会問題」を聞かれ、勇気を出して「LGBTの問題が気になっていて、LGBT関連のボランティアに参加したことがあります」と答えると、多くの面接担当者から「周りの人たちの問題について、わが身のことのように考えられて素晴らしいと思います」と言われる。

 わが身のことのようではなく、わが身のこと──。恐らく、こんなことを言う面接担当者は、自分の会社を志望する学生にLGBTの人はいないと思っているのだろう。そう強く感じ、カミングアウトしないのだという。

「やりたい仕事で得たい収入を得られる会社と、セクシュアリティーを隠さずに働ける会社を天秤にかけると、後者を優先して仕事を選ぶのは難しいと思うので、セクシュアリティーを隠さずに働けることを諦めているような気がします」

 カミングアウトできる職場とはどのような職場か。

「信頼という面が一番大きかったです」

 都内の会社で働くレズビアンの女性(35)はそう話す。2年ほど前に今の会社に就職した後、直属の女性上司(41)にカミングアウトした。今の職場は3社目だがカミングアウトしたのは初めて。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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