「コメディーってフェミニズムになりうるし、笑いって反体制になりうると思います」

 柚木さんの作品では、ご都合主義的なつじつま合わせではなく、いまここにある現実から解決策が模索され、魔法が生まれていく。それは“お化け屋敷”のように時に突拍子もないことなのだが──。ありふれた日常から奇跡的な瞬間や言葉を抽出していく柚木節が、今作でも随所で炸裂する。映像化も期待したい。

「樹木希林さんか市原悦子さんに演じていただきたいと思っていたら、お二方とも亡くなられてしまいました。でも、映像化は見てみたいです」(編集部・小柳暁子)

■書店員さんオススメの一冊

『なぜオフィスでラブなのか』は、現代小説をオフィスラブという視点で読み解き、巧みに読書欲をかきたてるブックガイドだ。東京堂書店の竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 秀逸なタイトルに脱帽。帯にあるように、公私混同にオフィスラブとルビをふるのも正しい。本書は綿矢りさや長嶋有などの現代の小説をオフィスラブという視点から読み解き、読書欲をかきたててくれる心憎いブックガイドである。

 仕事・恋愛・結婚の三者が交差するオフィスラブ。そこには時代状況や社会規範が刻印され、小説に描かれるオフィスラブを読むことで私たちのリアルな生が浮かび上がってくる。セクハラ・パワハラといった問題を見逃さず「労働」を思考する真摯さと、ジェンダーやセクシュアリティーの視点が自然と同居する繊細な筆致が本書の魅力だ。

 ベストセラー小説を絶対安全不倫小説と評するセンスや、働く女性だった著者の母についての文章など読みどころは多い。とりあげられた小説は書店で手に取ることができる。ぜひ本書片手に読んでほしい。

AERA 2019年4月22日号