校歌の歌詞カードは学生証などには掲載されておらず、行事の際などに配られる。文部科学省からの指導もあり、しばらくは1番しか歌われていなかったという(撮影/写真部・小黒冴夏)
校歌の歌詞カードは学生証などには掲載されておらず、行事の際などに配られる。文部科学省からの指導もあり、しばらくは1番しか歌われていなかったという(撮影/写真部・小黒冴夏)
東京福祉大と系列校の経営実態(AERA 2019年4月1日号より)
東京福祉大と系列校の経営実態(AERA 2019年4月1日号より)

 2008年に強制わいせつ罪で懲役2年の実刑判決を受けた、東京福祉大学創設者の中島恒雄氏。同大は現在「消えた留学生」が国会でも話題となっているが、その陰には中島氏の終わらない「恐怖政治」があるという。象徴的なのが、「中島恒雄 理念満ちて 真の教育 我ら築かん」と歌う同大の校歌だ。

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「国営別荘(刑務所)から帰ってきた人」

 2016年からの3年間で、ベトナムやネパールなどからの留学生が約1400人も所在不明になっていることが発覚した東京福祉大学(東京都)。創設者で元理事長の中島恒雄氏(71)は、学内で声を潜めてそう称されることがある。

 同大には、18年5月時点で約8千人の学生が在籍し、約5千人が福祉や日本語を学ぶ留学生だ。日本学生支援機構の調べによれば、留学生数は早稲田大に次ぎ国内で2番目に多い。

 同大は00年、社会福祉専門の大学として群馬県伊勢崎市に開学。現在は社会福祉学部、心理学部、教育学部、保育児童学部の4学部があり、名古屋や東京・池袋、王子にもキャンパスがある。留学生は14年5月時点で596人だったが、4年で約8倍に急増。それを主導したのが、大学の創設者で理事長、事務総長を務めた中島氏だ。同大の現役職員がアエラの取材に応じた。

「留学生受け入れの拡大は中島氏のトップダウンでした。政府のグローバル戦略の一環である留学生30万人計画も進み、留学生の受け入れは国策として伸びる、これは稼げると」

「消えた留学生」が国会などで問題となっているが、職員はこう続けた。

「中島氏は強制わいせつ罪で実刑判決を受け、文部科学省から学校経営に関与しないよう指導を受けましたが、恐怖政治は今も続いています。留学生の過剰な受け入れに違和感を持っても、中島氏の意向である以上、誰も止められない」

 中島氏は08年10月、同大の女性教職員ら5人に対する強制わいせつ罪で懲役2年の実刑判決を受けた。大学の総長室などで教職員にキスしたり、胸を触ったりするなどの行為を繰り返したことを認め、理事長などの全役職を辞任した。後任の理事長には、実母の範氏が就任した。

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