「胃袋には2タイプあることを最低限知ってほしい。プレッシャーがかかるとより食べられる“フードファイタータイプ”と、逆に食べられなくなる“神経質タイプ”です」(山口さん)

 最近では、盛り付けられた給食を、手をつける前に食べられる量に戻す「お減らし」が広く行われており、かつてに比べ完食指導は緩和されているという見方がある。しかし一方で、18年には給食の牛乳を強制的に飲まされ心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとする訴訟が起きたり、17年には完食指導した複数の児童が嘔吐したとして教員が厳重注意処分を受けたりしている。

 山口さんも先の男性も「ご飯を残さずきれいに食べましょう」という指導そのものを否定はしない。問題は、時に度が過ぎ、生徒個々の事情を見ることなく一様に強制されることだ。何が教員をそうさせるのか。元小学校教員の女性(36)は言う。

「『食缶が空になるクラスはいいクラスだ』という見方が教員の間にあって、そこに指導力が結びつけられてしまうきらいもある。完食は結果でしかないのに、『完食=指導力の証し』とねじれてとらえられたときに強要が起こりえます」

 保護者からの「給食費は同額支払っているのだからみんな同じ量を食べるべきだ」とのクレームや、食品ロスの問題が現場にプレッシャーとなることも。(編集部・石田かおる)

AERA 2019年3月4日号より抜粋