地域別にみると世界全体の売り上げの2割近くを占める中華圏で、昨年10~12月期の売上高は、前年から約47億8700万ドル(27%)減って131億6900万ドルにまで落ち込んだ。

 ちなみに日本の売上高は3億2700万ドル(4.5%)減の69億1千万ドル。

 3億ドル(約330億円)余りの減収だった日本市場の状況を詳細に説明する一方、47億ドル(約5170億円)を超える大幅な減収となった中国市場にはほとんど言及しようとしないクックは不自然で、逆に懸念の大きさを感じさせるものだった。

 なぜ中国でiPhoneの売れ行きが鈍っているのか。

 クックが言うように、「中国経済の減速」も「米中貿易摩擦に伴う米国製品への反発」も、理由の一つではあるだろう。

 しかし、私が1月に米ラスベガスで開かれた家電・技術見本市「CES」に大勢参加していた中国人のビジネスパーソンに取材するうちに感じたのは「もはやiPhoneでなくても、同様の機能を備え、そのうえずっと安いスマホがたくさんある」という彼らの本音だった。

 CESには、次世代通信規格「5G」を巡って、米国当局と緊張関係にある「華為技術(ファーウェイ)」も出展していた。渦中の5Gの展示はなく、並べられていたのは、売れ筋のスマホの数々だった。

 そのなかで、「P20」というスマホは、カメラの配置を含めたデザイン、カバーの質感、下部のスピーカーの配置まで、私が持っている「iPhone XS」によく似ていた。それでいて、価格はiPhoneの半分程度だ。ファーウェイの米国人スタッフに「いま当社は、世界の携帯電話市場で2位のアップルに迫っており、追い抜こうとしています」と聞き、その勢いを実感した。(文中敬称略)(朝日新聞記者・尾形聡彦)

AERA 2019年3月4日号より抜粋