真贋の不安をなくすには、業界団体の「日本貨幣商協同組合」の加盟店舗で選ぶのが無難だ。1967年創業、国内外の古銭や記念通貨を取り扱う泰星コイン常務取締役の本田哲也さんに話を聞いた。

「アンティークコイン初心者はプラスチックケースに格納してある『グレーディング』された状態のコインを買うのがおすすめです。これなら鑑定済みで目利き力は不要なので、初めてでも安心して買えます。発行数や現存数が限られている金貨は、その価値が保たれやすいですね」

 希少なアンティークコインともなれば資産家や収集家がまず手放さないため、マーケットでもなかなかお目にかかれない存在らしい。誰かが大量に市場放出しない限り、少ないパイを奪い合う状況が続くので、その価値は長期間担保される。

 日本の硬貨の製造を行う独立行政法人造幣局の「造幣局オンラインショップ」も面白い。期間限定の日本の記念コインがインターネットかハガキによる通販で買える。

 1月31日に「東京2020オリンピック競技大会記念千円銀貨幣」(9500円、消費税・送料込み)の受け付けが始まった。2月20日まで受け付けており、販売数量を上回る申し込みがあったら抽選となる。住民票登録のある住所からしか申し込めず、ハガキ1枚につき1人1個まで。何十年後(何百年後?)かに価値が出てくるかも……。

 89年(平成元年)に41円に値上がりした郵便はがきは、94年に50円、14年に52円、そして17年から62円になった。預貯金だけでお金を持っていると、インフレにより資産価値は目減りしてしまう。資産の10%を金で持つのがインフレ対策として有効というのが定説だ。

 また、意外に知られていないが、金の売買には消費税がかかる。買うときは消費税を払い、売るときは消費税をもらえる仕組みだ。つまり今年9月末までに金を買えば8%の消費税を乗せた金額を支払うが、将来の売却時には10%の消費税が乗った状態で受け取れるということになる。

 金投資に人が群がっている理由は、世界不安、インフレ対策とともに「消費税増税前」という隠れキーワードがあるのかもしれない。(ジャーナリスト・栗林篤、編集部・中島晶子)

AERA 2019年2月25日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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