米ワシントンで1月24日午前10時に開かれた2019年の終末時計の発表会見。昨年と変わらない「2分前」の設定は、直ちに議論を呼んだ。発表者には、ウィリアム・ペリー元米国防長官(右端)らも加わった (c)朝日新聞社
米ワシントンで1月24日午前10時に開かれた2019年の終末時計の発表会見。昨年と変わらない「2分前」の設定は、直ちに議論を呼んだ。発表者には、ウィリアム・ペリー元米国防長官(右端)らも加わった (c)朝日新聞社

 人類滅亡まで残り2分――。米科学者らが1月24日(日本時間25日)に発表した「終末時計」は、最も危機的とされた昨年の「2分前」から変わらなかった。ネットで世界配信された記者会見で、主催者は「過去最悪」の危機感を強調したが、視聴者からは主催者の現状認識に違和感を示すコメントが相次いだ。時間据え置きの判断はどのようにされたのか。

「終末時計(Doomsday Clock)」は、人類による地球滅亡の時刻を深夜0時とし、それまでの残り時間を示すことで、世界の危機的な現状を象徴的に警告している。米科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」(「核科学者紀要」の意味)が、主に核戦争と気象変動の二つの危機を考慮し、同分野の専門家の分析を踏まえ毎年の時刻を決定。1月に公表している。

 広島や長崎への原爆投下を受けて1947年に創設された終末時計の最初の時刻は「7分前」だった。これまでで終末に最も近づいたのは「2分前」。冷戦時代のまっただ中、米ソによる水爆実験で核開発競争が加速した53年と、北朝鮮の核開発が最大の脅威と認識された2018年だけだ。その過去最悪の現状認識が、今年も維持されたことになる。

「すでに午前0時でもいいような状況だ」
「現状を踏まえれば1分前になると確信していた」
「1分前でないなら、少なくとも1分40秒前にするべきだ」
「私は1分30秒前になると思っていた」
「1分59秒58」
「北朝鮮の核問題は改善している。むしろ、終末から遠ざかったのでは?」
「今後はトランプ(米大統領)がますます時計を進める」

 終末時計が「2分前」から変わらなかった発表に、記者会見がライブ中継された主催誌のフェイスブック上では、疑問を呈するコメントが相次いで掲載された。第2次世界大戦以来、最悪の状況に世界は置かれているという危機感よりも、時計の針が1秒も変わらなかったという同誌の現状認識への違和感が示された形だ。混乱深まる世界情勢を懸念する一般社会の体感の表れだった。

 そんな雰囲気を感じ取ったのか、記者会見で質問を受けた同誌7人のうちの1人が、語気を強めて強調した。

「終末時計が過去最悪の2分から変わらないこと自体が最悪だ。それこそが、われわれが伝えたいメッセージだと思ってほしい」

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どのように「2分前の据え置き」を判断したのか?