たとえば、サントリーホールディングスでは、中身よりも体裁にこだわる「パワポ病」や、CCメールを送ることで上司に報告したつもりになっている社内状況を危惧。毎週水曜の正午~午後3時まで原則的にパソコンを閉じる「プレミアムタイム」を設定し、ITで仕事が阻害されない取り組みをしていた(同社広報部によると「趣旨が浸透したため、現在は全社一律ではなく部署や個人ごとに実施している」とのこと)。トヨタ自動車も、企画書や社内の報告書、議事録などをA3の用紙1枚でまとめる文化がある。表やグラフなどを何枚もの資料に分けるのではなく、議論が活発になるように、伝わりやすくA3用紙1枚にまとめるスキルが必要とされる。その文化はいまだに健在で「さまざまな研修でも横書きのA3用紙1枚でまとめる重要性を指導している」(同社広報部)という。

 企業にソフトウェアを販売する「ドリーム・アーツ」はIT企業にもかかわらず、早期から「IT断食」を推進してきた。12年ごろには社内のパワポ使用禁止やCCメールの廃止、一時期は営業職の貸与パソコンを返却させるなどドラスチックな改革が行われた。現在は、かつてほどの「断食」はしていないが意識は共有されているという。

「パワポを使う社内会議は1割程度で、7割はホワイトボードに論点を書きだしながら、対面で議論するスタイルです。議事録もホワイトボードを写真に撮ることで事足りるので、メンバー全員が議論に参加できる。クライアントへの提案にも大きな模造紙を持っていって、そこに課題を書き込んでいくスタイルが主流なので、驚かれることも多いですね」(プロダクトデザイン本部・グループリーダーの伊勢川暁さん)

(編集部・作田裕史)

AERA 2018年12月17号より抜粋