※写真はイメージです(撮影/写真部・大野洋介)
※写真はイメージです(撮影/写真部・大野洋介)

 働き方改革全盛の今、アウトプットの「作法」も変わった。短く、薄く、簡潔に。求められるのは、分厚いパワポの束よりも、短いワードの紙1枚!

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 プレゼンテーションクリエイターの前田鎌利(かまり)さん(45)は、2年ほど前から「ある変化」を感じるようになった。ちょうど働き方改革が叫ばれ始めたころだ。クライアント企業から「会議の時間が取れない」「決裁すべき案件が増えた」という声が多く聞かれるようになり、「社員に資料作りをレクチャーしてほしい」という要望が増えた。時代が変わり、プレゼンを上手に回せる話術よりも、決裁者(上司)が求める「資料」を作れるスキルの重要性が高まっている、と前田さんは言う。

「会議に使える時間が減ったので、社内プレゼンは長くても5分が主流です。その時間で決裁者に必要な情報を提示して、いかに意思決定を助ける資料を作成できるかが問われています」

 前田さんはシリーズで16万部を超えるベストセラー『社内プレゼンの資料作成術』の著者で、ソフトバンクモバイル(当時)勤務時代には孫正義社長のプレゼン資料作りも担当した。2000年代にはエクセルの細かいデータをびっしりと詰め込んだ重厚長大な資料がもてはやされた時代もあったが、今は昔。現在は「パワーポイントのスライドで5~9枚が限度」だという。

「数字でも、人間が瞬間的に情報を処理できるのは『7±(プラスマイナス)2』とされています。スライドが7枚前後だと、決裁者は瞬時に課題が把握でき、判断がしやすい資料になる」(前田さん)

 プレゼンでは、提案者はつい「いかに入念に準備したか」を誇示しがちになる。アニメーションを駆使した何十枚にも及ぶパワポの資料を作ることに血道を上げ、完成した「きれいな資料」に満足する。会議の参加者も、次々と展開される膨大なパワポの資料を目で追うことで、何となく「わかった気分」になる。こうした実の無い会議の在り方を変えようと、12年ごろには「IT断食」なるワードが広まり、「パワポ禁止令」を出す企業も現れた。

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