フリーアナウンサー 渡名喜織恵さん/キャッシュレス決済にスマホは手放せない。カフェや小売店、映画館、タクシーなどの会員専用アプリも駆使し、「ピッ」と一瞬で決済完了だ(撮影/写真部・小原雄輝)
フリーアナウンサー 渡名喜織恵さん/キャッシュレス決済にスマホは手放せない。カフェや小売店、映画館、タクシーなどの会員専用アプリも駆使し、「ピッ」と一瞬で決済完了だ(撮影/写真部・小原雄輝)
渡名喜さんの財布の中には数枚のカードと16円しか入っていない(撮影/写真部・小原雄輝)
渡名喜さんの財布の中には数枚のカードと16円しか入っていない(撮影/写真部・小原雄輝)
渡名喜さんのとある一カ月のポイント取得状況(AERA 2018年11月26日号より)
渡名喜さんのとある一カ月のポイント取得状況(AERA 2018年11月26日号より)

 電子マネーやスマートフォンを使った決済など、現金が不要な「キャッシュレス」が普及し始めている。それを後押しするように、政府もキャッシュレス決済の優遇案を打ち出した。実際にそれによって生活はどれだけ便利になるのか、キャッシュレス生活を実践する人を取材した。

【写真】キャッシュレス生活実践者の衝撃の財布の中身/1カ月のポイント取得状況はこちら

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 家賃の振り込みをしようと、別の銀行のATMから現金を引き出してバッグにしまった。だが移動中に、大金が入った財布をうっかり落としてしまったのだ。それも2回続けて。

 これで、現金を使わないキャッシュレス生活をめざそうと決心した。7、8年前のことだ。

 いまでは「行動がスローだと言われる私が、めちゃめちゃキャッシュレス派と言うとすごく驚かれます」──。渡名喜織恵(となきおりえ)さんはそう言って笑う。テレビ・ラジオ番組でキャスターやリポーターの仕事をしている。ハキハキとした口調で明るく話す姿からはとても「スロー」な人には見えない。

 大金をなくしてからというもの、できるだけ現金を持ち歩かないようにした。クレジットカード(クレカ)や、徐々に普及が広がっていた交通系電子マネー・スイカなどを利用し、キャッシュレスでの決済を広げていった。お金を落としたのが、とにかくショックだったのだ。

 一気に舵を切ったのが、2年前にスマートフォンを新機種に変えたとき。電子マネーのモバイルスイカとクイックペイを使えるようにしたのが大きかった。クイックペイは事前のチャージが不要な電子マネーの一種で、活用できる店舗はコンビニ、スーパー、ドラッグストア、レジャー施設、家電など非常に幅広い。実際の支払いは普段使っているクレカに請求される。

 これにとどまらない。小売店や映画館、旅行・ホテル、タクシーなど各事業者が発行している会員専用アプリを15種類以上、スマホにダウンロード。これでポイントをためる。現金を持たない「安心」に加えて、実質的に料金の割引になるポイントをためる「お得」にも目覚めた。

 新幹線に乗る毎月の定期的な出張では、モバイルスイカ特急券を使う。乗車10分前にささっとスマホでチケットを購入。もちろん改札口を通り抜ける際もスマホをかざして「ピッ」だ。

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