どのタイプの学生が、どんな行動特性を持っているか。分析した結果を踏まえ、地方と東京で説明会の内容を変えたり、送るダイレクトメールの内容をカスタマイズしたりする。

 一人ひとりを見ようとすれば、当然手間がかかる。効率的に最適なアプローチをするため、マーケティングツールの活用も始めている。

 どの学生が、ウェブサイトのどのページを何分見たのか。前回アクセスしてから何日経ったのか。企業研究の度合いを、面接用に用意された受け答えで判断するのではなく、データに基づいてスコアリングする。学生の興味に合わせて、リクルーターとして派遣する社員を代える。近い将来、そんなことも可能になるという。

 一方で「一括採用は理にかなったシステム」と話すのは、人気企業ランキング常連企業の人事担当者だ。

 前述したようなインターンシップはそもそも倍率が高く、選考をくぐり抜けられるのはごく一部の学生であるのも事実だ。さらに言えば、企業活動は超エリートのイノベーション人材だけで回っているわけでもない。

「いくら学生時代にマーケティングをやっていました、と言われても、重視するのは一緒に働きたいかどうか。さまざまな協力会社とチームワークの中でうまくやっていけることのほうが大事」(人事担当者)

 なぜ働くのか、どう働くのか。職業観が多様化し、個人と企業の関係は大きく変化している。

 企業も学生も、青い鳥を求めてさまよい続けることがないように、明確な軸を持つ必要がある。(編集部・高橋有紀)

AERA 2018年11月19日号