写真:gettyimages
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 企業の採用の新たな潮流として、社員の知人という人脈を活かす「リファラル採用」がある。知人、友人ならではのメリットがあるばかりではなく、紹介する側の社員と会社の関係にも良い作用があるようだ。

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 近年採用のトレンドとして注目が集まっているのが「リファラル採用」だ。社員の知人や友人を紹介・推薦してもらい選考する採用手法で、アメリカでは過去10年間でもっとも採用者数が多い採用経路と言われている。

 リファラルは、いわゆる旧来の縁故(コネ)採用とは異なる。社員全員で採用すなわち組織作りにかかわっていこうという姿勢や、「この人と働きたい」「この人にうちの会社で働いてほしい」という思いが根底にある。

 リファラル採用のためのプラットフォームを提供するマイリファーの調査によれば、2014年時点ではリファラル採用を実施中・検討中だった企業はともに1割だった。それが2017年には33%が実施中、40%が検討中だという。

 急速な広がりの背景にあるのは、やはり売り手市場がもたらした採用難だ。希望する人材が見つからない、応募の数自体が集まらない。企業にしてみれば、転職サイトなどに登録している希望者だけでなく、「積極的に転職活動はしていないが、いい話があれば考えたい」という転職潜在層にリーチしたいと考えるのは当然だ。

 さらに、求人票の情報や、外部の人間であるエージェント経由の転職では、入社後に「聞いていた話と違う」といったミスマッチが起こることも少なくない。リファラル採用では、社風や職場環境についても実際に働いている知人経由で腹を割った話が事前に共有されるため、ミスマッチが起こりにくい。採用の決定率が上がるだけでなく、入社後の定着率も上がる、といいことだらけなのだ。

「あらゆる産業で、マッチングのあり方が変わってきています。雇用も例外ではない」と話すのは、マイリファーの鈴木貴史社長。求人情報を見て応募する、職歴・経歴でスクリーニングをする、といった形ではなく、人と人とのつながりという信用情報に基づいた本質的なマッチングでこそ雇用全体の最適配置が可能になる、と考える。

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