俳優のほかにもミュージシャンやラジオパーソナリティーもこなす。

「フィールドは選ばないけれど作品は選んでます。単純におもしろいと思うかどうか、そして『いまやるべきかどうか』。最近は特に、いまそれをすることの必然性や使命感みたいなものを強く感じます」

 このあと、津奈木と寧子はどうなるのか。実は脚本にも書かれていなかったという。菅田将暉の出した結論を、映画から読み取ってほしい。

◎「生きてるだけで、愛。」
 現代の若者たちの「いま」をリアルに綴るラブストーリー。関根光才監督。11月9日から全国で公開。

■もう1本 おすすめDVD「共喰い」
 菅田将暉が「俳優人生を大きく変えた作品」と自認する作品。芥川賞作家・田中慎弥の同名小説の映画化だ。

 昭和63年。17歳の男子高校生・遠馬(菅田)は父(光石研)と、その愛人と川べりの町で暮らしている。川向こうに住む母(田中裕子)は義手をつけ、一人で魚屋を営んでいる。父親の暴力的な性癖を見て育った遠馬は、自分も恋人に同じことをするのではと恐れていたが、ある日、事件が起こる──。

 小さな町に漂う閉塞、少年の鬱屈、暴力、親子の血といったテーマが、生々しく匂い立つ。菅田は当時を振り返ってこう話す。

「初めて経験した、ものすごく力強い現場で、これ以降は俳優としての仕事への向き合い方が変わりました。僕ら役者は映っているだけで、僕らだけで作品を作ってるわけじゃない。照明、音響、美術……あらゆるスタッフの仕事を俳優は背負って、前に立って伝えなきゃいけない。その責任の重さを自覚した映画でした」

◎「共喰い」
発売・販売元:アミューズソフト
価格3800円+税/DVD発売中

(ライター・中村千晶)

AERA 2018年11月12日号