現在の私立学校法は公共性を担保するための仕組みが不十分で、理事長がワンマン経営する余地を残している。現在、学校法人制度改善検討小委員会で、私立学校法の改正について議論が進んでいるので、改正案を出しているところだ。

 都内の中堅私大の職員は「助成金の要件に教員評価の実施など、文科省がやらせたいことをもろに書いてくる」と言う。

「産学連携のプレッシャーも強いが、企業にもそんなにお金があるわけではない」

 困難な時代の大学経営のかじ取りはどうあるべきなのか。今年4月に学長に就任した神田外語大学の宮内孝久学長(68)は、元三菱商事副社長。企業経営も学校経営も、基本的には同じだと考えている。

「われわれは教育のために優れたコンテンツとサービスを提供するのが仕事。若者たちが精神的、肉体的、知的にたくましくなり、自分の頭で考えて生きていくことが大事で、そのために大学がある」

 ライフネット生命保険の創業者で立命館アジア太平洋大学(APU)の出口治明学長(70)は、若年人口の減少による大学の受難という議論に反論する。

「国内しか見ていない議論で理解できません。世界的に見れば世界の人口は増えているので、大学は成長産業です。大学をもっと作らないといけないというのが世界の論調です」

 その上で、これからの大学に必要なのはリカレント教育(学び直し)だと言う。

「最近は、物事は10年で陳腐化すると言われています。これからは、大学を卒業して働き、また大学に戻って学ぶということを繰り返すような社会を作っていける国が成功するでしょう。そのために、これからの大学は社会人も教えないといけない。世界中の人びとを対象に、年齢問わずに教えるのがこれからの大学の使命だと考えるべきです」

(ライター・柿崎明子/編集部・小柳暁子)

AERA 2018年11月5日号より抜粋