科研費が採択されると、間接経費として研究経費の30%が大学に支給されるため、大学も支援に本腰を入れる。申請には研究の内容をまとめた資料のほか、詳細かつ具体的な予算書なども必要で、事務的なサポートが重要だ。立命館大では、研究者の研究活動をサポートするリサーチオフィスを設置しており、各分野に専門のスタッフを配置している。科研費申請の時期になると、職員のほかに専門の臨時スタッフを雇って書類のチェックを行う。申請数は年々増えているものの予算が据え置かれているため、競争が激しくなっているのが実情だ。

「近年、国の予算は特定の分野へ集中する傾向があり、そこから漏れた分野の研究者たちは苦労している。すぐに実用化できる分野は企業でも手掛けている。大学が行っている基礎研究を評価しもっと予算を付けていかないと、日本が築いてきた科学技術立国の将来はあやういのではないでしょうか」(飴山教授)

 科研費の18年度の予算額は2286億円。文部科学省とともに科研費の事業を担う日本学術振興会研究事業部研究助成企画課によると、科研費の予算規模は近年ほぼ横ばいだが、応募件数は増えており、その一因として教員が自由に研究を行うための大学の基盤的予算が減ってきていることもあるのではないかという。

「本来、科研費は、大学の基盤的な予算で行われる研究にプラスして行うためのもの。科研費がないと研究ができないとの声がある点は、日本の学術研究環境においては理想的とは言えないと思います」

 帝国データバンクの調査によると、私立の大学法人498法人のうち16年度赤字となったのは163法人。約4割が赤字経営だ。日本私立大学教職員組合連合(私大教連)中央執行委員長の丹羽徹・龍谷大学教授(57)は言う。

「私学助成金が減って、経常費に対する補助割合は10%を切っています」

 日本の大学生1人あたりの公財政支出額は年間69万円でOECD各国平均の111万円を大きく下回っている。ただし国立は202万円であるのに対し、学生数の約8割を占める私立大学はわずか16万円だ。

「授業料値上げにも限界がある。その中で大学は経営努力をしろといわれ、助成金が減っているので競争的資金の方にシフトしていく。トップダウンでがんじがらめになっている状況が、いろいろな大学で起きています」

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