安室引退後も続く「私らしく生きる女性」と不満男性とのせめぎ合い 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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安室引退後も続く「私らしく生きる女性」と不満男性とのせめぎ合い

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25年間の活動を写真で振り返る。いくつの時もかっこいい(撮影/写真部・小山幸佑)

25年間の活動を写真で振り返る。いくつの時もかっこいい(撮影/写真部・小山幸佑)

【ミュージシャン、ジャーナリスト】モーリー・ロバートソンさん/1963年、アメリカ生まれ。ハーバード大学卒業。「スッキリ」(日本テレビ)などレギュラー出演多数。著書に『挑発的ニッポン革命論』(集英社)など(写真:本人提供)

【ミュージシャン、ジャーナリスト】モーリー・ロバートソンさん/1963年、アメリカ生まれ。ハーバード大学卒業。「スッキリ」(日本テレビ)などレギュラー出演多数。著書に『挑発的ニッポン革命論』(集英社)など(写真:本人提供)

 多くの人に惜しまれながらも9月16日に引退した安室奈美恵。ジャーナリストのモーリー・ロバートソンは、その功績を讃えるとともに社会に与えた影響について語る。

【写真特集】安室奈美恵の軌跡を辿る展覧会の様子はこちら

*  *  *
 90年代、僕は関東のFM局で深夜番組を持っていました。僕のきわどい発言やワールドミュージックからの選曲も支持をいただいていましたが、ある時期から、自由度が高かった深夜枠でも、スポンサーのタイアップがついたJ-POPをかけざるをえなくなった。同じ頃に登場したのが、エイベックスが仕掛けるクラブ音楽のムーブメント。その中心にいたのが安室奈美恵さんでした。安室さんの楽曲は完成されていましたが、僕は上から言われるがままに曲をかけたくなかったな(笑)。

 40歳での引退を早いと惜しむ声も多いですが、僕からすれば、よくここまで頑張ったと思います。実は多様性が許されず、#MeToo運動が最も届かないのが日本の芸能界。純粋に音楽が好きで歌い続けていても、勝手なイメージを作られる。メジャーになるほど利権に絡む人たちが増え、本人が操縦桿を握れず疲弊してしまう。音楽より顔で消費される歌い手も多い。

 そんな中で25年続けてこられたのは、彼女が歌唱力とパフォーマンスで勝負できる数少ない人だったから。初期のビッグビジネス的な活動から離れ、お膳立てのない中で自分の音楽を追求してきたことも含め、功績は大きいと思います。

 安室さんが引退する平成の終わりに、芸能界やスポーツ界などで内部分裂が起きています。この流れは、さらに多くの業界に波及していくでしょう。

 その中で無視できないのが、学歴のある50代男性の不満です。僕も同じ世代だからわかるのですが、彼らは個性や夢を犠牲にして、いい大学、いい会社に入ることで安定と地位を約束されてきました。でも現実は、約束されたはずの地位や分配を得られていない。経済環境の変化で分配するパイが小さくなっている。彼らの一部は、「こんなはずじゃなかった」という不満を、成功している人や、仕事ができる女性に向けています。

 平成の30年間でたまった50代男性の不満、多様性や女性の台頭への反発と、安室さんみたいに「私らしく生きる」という女性のせめぎ合いは、しばらく続くでしょう。自分で道を開けない男たちは、道を開ける30~40代の女性をくじこうとするかもしれない。でも今は変革期。女性は心折れずに頑張ってほしい。安室さんは選択肢がそこまでない中で、1人で戦ってきた。どの世界でも、これから生き残れるのはこつこつと自分を磨いて、1人で戦える人です。

AERA 2018年9月24日号


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