実はその後、この月の消費額を超えたのは消費税増税前の駆け込み需要があった14年3月など数えるほどしかありません。震災があった月の消費を超えられない。その中で消費税を上げることがどれだけ経済の重荷になるか、政権も官僚も理解しているとは思えない。風邪をひいて寝込んでいる患者の布団に氷を放り込むようなものなのです。

 こう言うと日本の財政のためにはやむを得ないんだ、という人が必ず出てきますが、日本の財政は別に危なくもなんともありません。トルコやアルゼンチンが経済危機に陥るのは国の借金を外貨で調達しているからで、日本は90%以上国内で調達し、しかも金利はゼロ、です。経常収支は世界最大にして200兆円以上の資産超過。こんな国は世界中に日本しかないわけで、この国が倒産したら、世界中の国が倒産します。

 とにかく帳尻を合わせたい財務省が財政危機を煽り消費税アップを叫ぶわけですが、これぞ経済成長を阻害する最大の要因です。したがって、今求められる経済政策があるとすると、いかに消費を増やすか以外にはありません。そのためには一度消費税を下げるという選択はありです。ここで下げると、いずれまた上がるだろう、と考えた消費者が今や、とばかりにお金を使う可能性は十分です。こういう逆転の発想が必要な時期に来ています。

AERA 2018年9月17日号

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ぐっちー

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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