8月27日、都心に落ちる雷 (c)朝日新聞社
8月27日、都心に落ちる雷 (c)朝日新聞社
東京23区内の注意エリア(AERA 2018年9月10日号より)
東京23区内の注意エリア(AERA 2018年9月10日号より)
過去最大級の「ゲリラ豪雨」で浸水深が1メートルを超えると予測された地点(AERA 2018年9月10日号より)
過去最大級の「ゲリラ豪雨」で浸水深が1メートルを超えると予測された地点(AERA 2018年9月10日号より)

 短時間に膨大な雨量をもたらす、ゲリラ豪雨。この夏、都内ではこのゲリラ豪雨による浸水被害もあった。都内の浸水の危険地域は、どんなところにあるのだろうか。東京23区の「リアルタイム浸水予測」の開発を行う早稲田大学理工学術院の関根正人教授(都市水防災工学)に聞いた。

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 23区全域でゲリラ豪雨による浸水被害のリスクが高いエリアはどこなのか。

 関根教授によると、ピンポイントでリスクが高いのは、「谷状の凹部地形の地点」と「道路が鉄道の下をくぐるように延びているアンダーパスの地点」だ。前者は、渋谷駅前や溜池、日比谷の交差点など。これらの地点は周辺に降った雨が流れ下って集まるため、特に深刻な浸水被害をもたらす恐れがあるという。後者は、首都高速の高架をくぐる渋谷駅近くの国道246号や、新宿駅の新宿大ガード(青梅街道架道橋)付近が代表例だ。

 関根教授がもう一つ、リスクを指摘するのは地下街だ。都心部には地下鉄が縦横に延び、駅と地上をつなぐ連絡口は1千を超える。連絡口からの水の流入を防ぐことができなければ甚大な「地下浸水」が発生する。

「特に危険なのは溜池交差点付近の地下鉄連絡口です。このあたりは地上でたびたび浸水を繰り返している谷部なので、よほど気を付けないといけない。ここには、溜池山王駅の連絡口が複数あります」(関根教授)

 東京メトロは、浸水の恐れのある駅の連絡口に止水板や防水扉の設置を進めている。ただ、防水扉も普段は開放されており、浸水のリスクが迫るタイミングに遅滞なく対応できるか、といった人的要素も課題となる。

 こうした浸水被害対策の決め手として期待されるのが、23区対象のリアルタイム浸水予測だ。全ての下水道内の水の流れも計算に含まれているため、例えば30分後に具体的にどの交差点で冠水するのか、いつどこでマンホールから水が噴き出すのかも推定できる。このため、通行止めや防水扉を閉じる判断も容易に下せるようになる。

 関根教授が取り組んできたこのシステムは国と連携し、急ピッチで実用化が進む。江戸川、葛飾、墨田、江東、足立の各区は今秋をめどに、来夏までには全23区を対象に試験運用に入る計画で、20年の東京五輪開催時の全面運用が目標という。関根教授はこう強調する。

「上手に活用してもらうには、自分が住む地域にどういうリスクが潜んでいるのか平時から知っておくことに加え、どの情報にアプローチすればよいのか認知してもらうことが重要です。活用してもらってこそ初めて減災効果が発揮されます」

(編集部・渡辺豪、中島晶子)

AERA 2018年9月10日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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