シモジマ/8月に新たに設置した「通販資材コーナー」(撮影/品田裕美)
シモジマ/8月に新たに設置した「通販資材コーナー」(撮影/品田裕美)
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ミスターミニット/本社工場(東京都台東区)の一角(撮影/品田裕美)
ミスターミニット/本社工場(東京都台東区)の一角(撮影/品田裕美)
宮本勝浩関西大学名誉教授が算出した主な経済効果(AERA 2018年9月10日号より)
宮本勝浩関西大学名誉教授が算出した主な経済効果(AERA 2018年9月10日号より)
メルカリの経済効果(AERA 2018年9月10日号より)
メルカリの経済効果(AERA 2018年9月10日号より)

 爆発的に普及したフリマアプリ「メルカリ」。時計修理、梱包資材など周辺市場を巻き込んで巨大な経済効果を生み出している。さらに、企業が牛耳ってきた消費のあり方を消費者主導へと大きく変えつつある。

【図で見る】メルカリの経済効果はこちら

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使ったことはなくても、メルカリの名前を知らない人はいないだろう。「mercari」はラテン語で「売り買いする」という意味で、「マーケット」という言葉の語源でもある。

 個人同士が簡単にモノを売買できるフリマ(フリーマーケット)アプリの最大手。スマホで撮影すれば出品できる手軽さと、代金のやり取りが事業者を仲介して行われる安心感から、爆発的に広まった。

 2013年7月のサービス開始以来、利用者数は倍々ゲームで増えてきた。18年8月末時点の累計アプリダウンロード数は7570万、月間アクティブユーザー数1075万を数える(ともに国内)。

 国内初のフリマアプリとして12年に登場したのは「フリル」(のちに楽天が運営する「ラクマ」と統合)だが、今となってはメルカリの一人勝ち状態。フリマアプリ全体の市場のうち、メルカリ取扱高が7割を超える。

 話題にも事欠かない。つい先日は、読書感想文や自由研究といった夏休みの宿題が出品されていることが問題となり、文部科学省の要請で禁止に。過去には現金が額面以上の売値で出品される騒動もあった。それもこれも、多くの人が集まり、あの手この手で自分が売れるものをひねり出した結果でもある。

 自分が売り手になるという体験は、新鮮で楽しい。まるでお店屋さんごっこのように、わくわくする。

 断捨離できるものはないかと部屋を見回し、出品前に洋服をクリーニング店へ。値段を決め、客がくるのをスマホで眺める。商品が売れればさっそく発送。100円ショップで包装用品を探し、お礼を書いて同封する小さな便箋もついで買い。よし、明日の出社前にコンビニから発送だ。意外に高く売れたから、新しいワンピを買っちゃおうかな──。

 一連の流れの中で、チャリン、チャリンと小銭を使う。売れるとわかると、次の買い物をしたくなる。メルカリが生み出す、そんな新しいお金の動きをアエラ編集部では「メルカリノミクス」と名付けることにした。

 メルカリノミクスはどのぐらいの規模なのか。メルカリと、慶応義塾大学大学院経営管理研究科の山本晶(ひかる)准教授が行った調査では、フリマアプリによる周辺サービス市場への経済効果は年間752億円だった。フリマアプリ利用者が出品前に出すクリーニング代、発送のための梱包用品の購入、郵便や宅配便に使う送料、中古品をリユースするための修理や時計の電池交換、洋服のお直しの代金などが、アプリ利用前に比べて年間平均で1人あたり4143円増加したためという。

これは、波及効果を含めない直接効果のみの数値。今回アエラ編集部では、波及効果を含めた経済効果がどのぐらいになるのか、関西大学の宮本勝浩名誉教授に算出をお願いした。宮本名誉教授は「阪神タイガース優勝の経済効果」などさまざまな事象の経済効果を発表してきた。

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