荒川和久(あらかわ・かずひさ)/博報堂ソロもんLABO・リーダー。早稲田大卒。著書に『超ソロ社会』『結婚しない男たち』など(撮影/編集部・渡辺豪)
荒川和久(あらかわ・かずひさ)/博報堂ソロもんLABO・リーダー。早稲田大卒。著書に『超ソロ社会』『結婚しない男たち』など(撮影/編集部・渡辺豪)
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産業別男女正規・非正規職員生涯未婚率(AERA 2018年9月3日号より)
産業別男女正規・非正規職員生涯未婚率(AERA 2018年9月3日号より)

 人生100年の時代と言われて久しく、既婚・未婚に関係なく、一人一人が「ソロで生きる力」が必要な世の中が到来しようとしている。博報堂ソロもんLABO・リーダーで『超ソロ社会』『結婚しない男たち』などの著書がある独身生活者研究の第一人者・荒川和久氏に、そんな時代の「ソロ力」の養い方について聞いた。

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 ソロにも2通りあります。

 一つは、結婚したいのにできない人。このタイプは結婚さえすれば幸福がついてくるという、「結婚の状態依存」に陥りがちで、結婚しても往々にして数年で離婚してしまうケースが多いようです。

 なかには、本当は結婚したいのに「独身で幸せ」と表面上偽る、「偽りの幸せ依存」にはまる人もいますが、こういう人は、そのうち孤独に耐えられなくなります。

 もう一つは、独身が楽しくて結婚の意思がない人。同じ独身でも心理状態が違います。こういう人は周囲の「結婚圧力」にも動じません。

 人生100年の時代に、「結婚」や「仕事」といった特定の状態に依存せず、たくさんの人とのつながりを持つことで、どんなリスクにも対応できるよう、自分自身が自立意識を持つことが重要です。

 私がソロで生きる力を問いたいのは、現在結婚している人たちです。特に、既婚男性は夫婦生活が長くなればなるほど、妻に対する精神面の「配偶者唯一依存」が増します。

 ずっと独身の人は、孤独に対する適応力が備わっています。孤独を苦に自殺するのは長年連れ添った配偶者と死別したり、熟年離婚したりした男性に多く見られる傾向なのです。

 既婚・未婚に関係なく、一人一人が「ソロで生きる力」を身につけるには、頼れる依存先を複数持つことが大事です。人間はどこかに所属することで安心を得ます。結婚して家族をもつことで得られる安心を私は全く否定しませんが、それは一つの形態にすぎません。職場や地域といった伝統的な共同体の人間関係が希薄化するなか、家族とさえつながっていれば安心というのは幻です。

 入り口は立ち飲み屋でも、ボランティア活動でもいい。そうした場で、まずは名刺交換なしでも交流できるよう心掛けていただきたい。肩書なしであなたは誰かと友だちになれますか?

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