総裁選出馬を正式表明した石破氏の会見。この後、安倍首相は秋の臨時国会での改憲案の提出に言及した。「正直、公正の言葉でモリカケ問題を想起されるのを嫌い、争点を変えようとしたのでしょう」(森田さん)(c)朝日新聞社
総裁選出馬を正式表明した石破氏の会見。この後、安倍首相は秋の臨時国会での改憲案の提出に言及した。「正直、公正の言葉でモリカケ問題を想起されるのを嫌い、争点を変えようとしたのでしょう」(森田さん)(c)朝日新聞社

 岸田文雄政調会長の不出馬で勝負あったと思われた自民党総裁選。さぞかし意気消沈しているかと思えば、石破陣営からは笑顔が見えた。

 国会議員票の約7割に当たる党内5派閥の支持を受け、自民党総裁選で圧倒的優位に立つ安倍晋三首相。陣営からは「もうゲームオーバー」との声すら上がっている。陣営関係者は、

「2012年の総裁選では石破茂氏に地方票でリードを許した。総裁選後の石破氏の影響力を抑えるためにも、地方票でも負けるわけにはいかない」

 自民党総裁選は1人1票の国会議員票(今回405票)と、同数の地方票で争う。

●現政権は「貴族の政治」

 安倍首相は8月26日に訪問先の鹿児島県で立候補を正式表明する方針だ。鹿児島を選んだのにも、地方重視の姿勢を示す狙いがあると見られている。

 石破陣営は石破派(20人)に加え、竹下派(55人)の一部の支持を取りつけたが、国会議員票では安倍首相に遠く及ばない。ただ、石破陣営に感触を尋ねると、具体的な回答は避けたが、

「石破派の幹部の顔はみんな明るいですよ」(石破派の議員)

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫さんはこう話す。

「岸田派(48人)のなかには、岸田文雄氏の不出馬の判断をいいと思わない若手もいて、一枚岩ではない。石原派のなかにも石破支持はいる。無派閥(73人)の半分は安倍3選支持と言われるが、残り半分はわからない。石破氏は12年(国会議員票34票)を大きく上回り、3桁に届く可能性は十分にある」

 地方票はどうなのか。石破派の議員は自信をのぞかせた。

「自民党が野党だった12年の総裁選とは違い、相手は現職の総理大臣。前回ほど票を集めることは難しいと見ているが、反応はとてもいい。アベノミクスの実感が地方にはなく、地方から見れば安倍政権は貴族の政治のように映っている。首相周辺のお友達は何をしても許され、問題は官僚に押しつけられ、財務省の公文書改竄に至っては自殺者まで出た。それでいて政治家は誰も責任を取らない」

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「離党する覚悟で戦って」