稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
塩のかわりに「ゆかり」をかけたらこれがまたウマイ!熱中症予防にもなるしね(写真:本人提供)
塩のかわりに「ゆかり」をかけたらこれがまたウマイ!熱中症予防にもなるしね(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【稲垣さんのお気に入りのスイカの食べ方はこちら】

*  *  *

 猛暑が続くとなんとも輝いて見えるのが「スイカ」。カットされた真っ赤なヤツが八百屋さんに並んでいるのを見ると、ガブッと噛み付いたときのあの独特な薄甘さ、そしてシャリシュワな食感を妄想し、体から失われた水分がスウウと補給されていくさまを思い描いてうっとり。

 しかし。

 私にはスイカに手を出せない事情があるのでした。そう冷蔵庫がない! 一人で食べられるスイカの量など知れてるからね。ということでずっと眺めるだけだったんだが、今年、さすがの暑さにどうしても食べたいと欲をたぎらせていて、ふと画期的なアイデアを思いついてしまった。

 さっそく近所の八百屋さんにて8分の1ほどにカットされたスイカを堂々と購入。そして行きつけのカフェへ。「これ、お土産です!」。すると予想通り、マスターが適当にカットしてお客さんに配ってくださいました。もちろん私の分も。マスターにはお手間をかけさせてしまいましたが、見知らぬ方に「今年初スイカです!」とお礼を言われたりして、数百円の投資ですっかりお大尽気分です。

 で、この時気がついたんですけど、スイカってみんなで食べるから美味しいんだね。あっつい日、さあスイカだよ~と言われてわらわらと集まって、かぶりついて、不意に目があってニッコリする。その全てがスイカの味なんだなーと、中年独身女はしみじみしたのでした。

 で、そのしみじみが忘れられず何度も同じことをしていたら、さすがに最近「……また?」という視線を感じないでもない。まあ何事もやりすぎはよろしくないですな。

 というわけで、最近はモモに手を出しております。今年はモモの当たり年だそうで、安くてウマイ! 3個250円とかで買ってマスターや常連仲間に強制配布。オススメは洗って皮ごと、ちょいと塩をかけて食べると感涙モノ……なんていうウンチクを聞いてもらえるのも嬉しく。つまりは小金を払って皆様に相手にしていただいております。誠にありがとうございます。

AERA 2018年8月27日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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