合葬タイプは安価だが、知らない人と一緒に納骨されるのには抵抗がある人も多い。そのため、10年、20年など決められた期間は個別に弔い、その後に合葬するといったタイプも選択できる。墓を建てない海洋散骨や自宅供養が、その後のメンテナンス費がかからないという意味で最もリーズナブルだ。

 遺骨の移動先を決めたら、自治体からもらった改葬許可証とともに、現在の墓を畳む作業に入る。墓石の処分や区画整理、遺骨の取り出しは地元の石材店に依頼することになるが、処分や区画整理に1平方メートルあたり8万~15万円、取り出しに1人あたり1万~5万円の費用がかかる。取り出した後は「洗骨」といって、薬品洗浄により遺骨に付いた汚れや雑菌を除去し、改めて乾燥させる作業が必要になることも。散骨にする場合は「粉骨」(遺骨を粉にする)。洗骨にしても粉骨にしても、通常は業者に有料で依頼することになる。

 遺骨を新たに納めるときには石材店に支払う納骨費用が1万~3万円、さらに「開眼供養」や「お性根入れ」と呼ばれる供養のお布施が発生──と、ここまで見てきて遺骨の移動がどれほど“骨”の折れる作業か、おわかりいただけただろうか?

「これを単なる苦労ととらえるか、両親や祖父母、その先にいるご先祖様との縁をつなぐ行為ととらえるかで、墓じまいに対する思いも変わります。どんな形を選ぶにせよ、人が持っている先祖や寺社仏閣に対する感謝や祈りの気持ち、信仰心は大事にすべきものですから……。葬送という儀式が、形を変えながらも世界中で脈々と続いているのは、きっと人間にとって意味のある行為だから。自分の人生を見つめ直し、新しい弔い方を考えることが、これからの墓じまいには必要です」(吉川さん)

(経済ジャーナリスト・安住拓哉/編集部・中島晶子)

AERA 2018年8月13-20日合併号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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