「それまでは現代につながる切り口がなかなか発見できなかったのですが、時代感が似てきていると思った。いまこそ撮るべきではないかということで撮影を始めました」

 関東大震災後という時代設定ではあるが、演じている俳優のせりふも言葉遣いも現代的だ。

「設定は大正時代ですが、現代劇として撮りたかった。ギロチン社の青年も、今でいうフリーターや派遣の元祖みたいなところもある。信じられるものはない中で、何か変えたいと思っている。そのあたりが今の若い人と通じる部分が多いと思います」

 本作は、2010年公開の「ヘヴンズ ストーリー」から8年ぶりの自主企画となる。自己資金の投入はもちろん、15年末から資金提供者を募り、個人や会社からの出資やカンパで制作費を調達してきた。

「今回は一般の方々からの出資もあり、そういう人たちの思いも入っている。映画は時代によって作り方が変わっていくと思うが、作りたい題材の映画を自分たちで作ることが大切。商業ベースではない形で映画制作ができる方法を、なんとか見つけてできた映画だと思います」

 今年は米騒動から100年、全共闘運動から50年の年。今はおとなしい日本の民衆も、かつては異議申し立ての運動や暴動を起こしていた時代があった。そんな記憶を召喚する作品でもある。

「ただ全体的なテーマとしては、中濱鐵が言っている『隣にいるヤツは敵じゃない。共闘しよう』という言葉に集約されます。身分や立場の違う人と共に生きることで、大きな変革ができるのではないかというのがテーマです」

 本作のノベライズ『菊とギロチン』(栗原康著、タバブックス)には、監督自身の手による短編小説「その後の菊とギロチン」が収録されている。ここでは後日談として、山谷暴動や東アジア反日武装戦線も描かれている。(編集部・小柳暁子)

AERA 2018年7月23日号