伊藤忠商事 宮脇千聡さん(31)/朝食はたいてい会社で食べる。朝型勤務は、仕事の効率が上がるだけでなく、通勤電車で座れるメリットもあるという(撮影/岸本絢)
伊藤忠商事 宮脇千聡さん(31)/朝食はたいてい会社で食べる。朝型勤務は、仕事の効率が上がるだけでなく、通勤電車で座れるメリットもあるという(撮影/岸本絢)

 かつては激務から「24時間戦う」イメージがあった商社の社員たちが、「働き方改革」で大きく変化している。労働時間に変革をもたらした伊藤忠商事では、まずは社員の意識改革から入ったという。

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 時間の面では伊藤忠商事で取り組みが進む。住生活カンパニー事業・リスク管理室で働く宮脇千聡(ちさと)さん(31)の朝は早い。午前6時ごろ家を出ると、7時には東京・北青山にある本社に着く。

「早朝は頭が冴えているので、仕事に集中しやすいです」

 この日、宮脇さんは「朝活中国語会話カフェ」に参加した。伊藤忠が中国語を話せる人材を育成する目的で2016年に始めた取り組みで、社員を対象に週に2、3回実施する。入社8年目の宮脇さんは、入社時は「ニー・ハオ」くらいしか話せなかったと笑うが、今や上級者レベル。中国人講師とバナナを食べながら午前7時半~9時ごろまで、楽しくレッスンに励んだ。

「余裕をもって始業時間の朝9時を迎えられます」(宮脇さん)

 午後8時以降の残業を原則禁止する──。伊藤忠がこの「朝型勤務」をスタートさせたのは13年10月。その代わり、午前5時から8時の早朝勤務は深夜と同様の割増賃金を支給し、午前8時までに出社した社員には、健康管理の観点から手づくりスープやサンドイッチなどの軽食を無料支給する。働き方の価値観を根底から変える改革だった。

 だが社員の意識を変えるのは容易ではなく、「24時間戦う」ことを刷り込まれてきた社員の反発は強かった。人事・総務部企画統轄室長の西川大輔さんは振り返る。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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