「毎晩ローラー作戦で、夜8時以降も残っている社員一人ひとりを説得して回りました」

 根気強く続けた結果、社員の意識も変わり始めた。何より仕事の効率性が上がると実感することで、制度は1年もしないうちに定着したという。

 結果は数字に表れた。夜8時以降に残業する社員は年々減り、今では導入前の約30%から約5%(17年度)にまで減った。夜10時以降はほぼゼロ(同)。午前8時より前に出勤する社員は全体の45%(同)にも上る。

 想定外の効果も出た。電力使用量は約7%減、タクシー代は約40%減。残業手当も朝食の費用を差し引いても8%減った。

 先の宮脇さんは、早い時は夕方5時半には会社を出る。もともと朝型タイプだったというが、制度導入前は一人だけ早く帰ることへの後ろめたさを感じていた。だが、それもなくなった。会社帰りにジムで汗を流したり野球やサッカー観戦を楽しむ。

「友だちとの飲みも断らずにすみます(笑)」

 先の西川さんは力を込める。

「改革の究極のゴールは会社の成長。そのためには社員が健康で、働きがいがなければいけない。やらなければいけない働き方改革は、まだまだあります」

(編集部・川口穣、野村昌二)

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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