ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 西日本全体を集中的豪雨が襲い、「平成30年7月豪雨」と名付けられました。被害にあわれた方に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興を願っております。

 さて、米中貿易紛争で米経済が停滞するとか世界で株が暴落する、などとまことしやかに話す「専門家」たちをよく目にしますが、自分で会社一つ経営したことがないというのはお気楽なもんだ、とつくづく思います。米国はGDPの70%が国内の消費ですから、貿易問題が米経済に与える影響は自ずと限られます。輸出入をやっている事業者の皆さんの心理的変化というのは否定できません。これによって彼らが当面投資計画を先送りする、なんてことは起きるでしょうから影響がないとまでは言いませんが、限定的であることは確かです。

 問題はそこではなく、むしろ日本のような高度工業生産国の内部でサプライチェーンがズタズタにされるような今回の災害のほうがはるかに深刻なことは、7年前の東日本大震災の時の世界経済の教訓です。教訓はいいんですが、多くの企業は、結局日本に取って代われる国がないので、せいぜい在庫を増やすことくらいしか対処方法がなく、当面は耐え忍ぶしかない。一部、災害の少ないシンガポールなどに生産拠点を動かすような動きが実際に出てきていましたが、この災害の多い日本で多くのキラーコンテンツが製造されており、そのサプライチェーンが切れると世界経済が立ち行かなくなるという事実は、米中貿易問題以上にセンシティブな問題であることを認識する必要があります。

 米国の象徴ともいえるiPhoneを1台売ったときの利益はどのくらい米国に残るのか、米国の大学生にアンケートを取ると、70%以上と答える学生が半分以上いる、という結果が出ていました。まあ、わからなくもありませんが、実際に販売したときの利益の行き先を見てみると、

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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