一般に投信は分散投資を目的としたもの。個別銘柄は業績などによって上げ下げを繰り返すため、同時に複数の企業に投資することでリスク分散を図るのだ。日本国内で言うと、円安のときには輸出系企業の株価が伸びるが、円高トレンドの際には電力などの“ディフェンシブ銘柄”が買われる傾向にある。このように異なる値動きの株式を組み合わせることで、総合的なリターンを目指すのが本来の投信と言っていいだろう。

 ところがテーマ株ファンドは、特定の分野の複数の企業に集中投資する。おのずと、そのテーマが脚光を浴びているときには大きな値上がりを見せるが、旬が過ぎればすべての投資先の株価が一気に下がってしまいやすい。

 Aさんが手を出したヘルスケアやバイオ関連の商品は、その典型だ。00年のITバブル直前には、ITベンチャーに集中投資するファンドがいくつも登場したが、来年償還を迎えるあるITベンチャー関連の商品は1999年の設定時と比較して分配金込みのリターンは約30%のマイナス。08年には基準価額が70%安の水準にまで落ち込んだ。

 その後も00年代にはエコファンドや社会貢献ファンド、10年代からはシェールガス関連のファンドなどが脚光を浴びたが、その多くが設定時の価格を割り込む時期が続いたのだ。

そこには、「テーマ株ファンドの多くが設定時にピークを迎えている」という背景もある。

「テーマ株ファンドは総じて、あるテーマが話題になって、投資先が増えてきたところで設定されるもの。株式市場ではすでに人気になっている企業に投資する傾向にあるので、高値づかみになりやすい」(山崎氏)

 Bさんが投資したAI関連の商品で直近の組み入れ比率が最も高いのは6.4%のマイクロン・テクノロジーというアメリカの半導体製造企業だが、同社の株価は目下高値更新中。5%で2番目に多いグラフィックメモリーのメーカーであるエヌビディアになると、ここ3年で株価は10倍に値上がりしている。さらなる値上がりの可能性もあるが、高値づかみとなるリスクは小さくない。

 ファンドの基準価額の値動きは、組み入れ銘柄のパフォーマンスを下回る傾向にもある。ファンドは資産の一部を年1、2回分配金として支払うので、分配金の分だけ基準価額が下がるためだ。

 加えて、前述のようにコスト高。多くのテーマ型ファンドには基準価額に対して1~3%の販売手数料が発生するのが一般的。さらに毎年1~2%の信託報酬が発生する。最初の1年に限れば、最大でマイナス5%からのスタートになるのだ。旬なテーマに合わせて別のテーマ型ファンドに乗り換えでもしたら、そのたびに手数料が高くついてしまう。(ライター・田茂井治)

AERA 2018年7月9日号より抜粋