佐藤優が解説「ロシアを巡る国際政治」 北方領土、北朝鮮問題の行方は?

ロシア

2018/07/01 16:00

佐藤優(さとう・まさる)/元在ロシア日本国大使館三等書記官。15歳で初めてソ連・東欧を旅したことが著書『十五の夏』に(撮影/写真部・小山幸佑)
佐藤優(さとう・まさる)/元在ロシア日本国大使館三等書記官。15歳で初めてソ連・東欧を旅したことが著書『十五の夏』に(撮影/写真部・小山幸佑)
北方領土問題/第2次世界大戦末期、当時のソ連が択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の4島を占領。1956年の日ソ共同宣言では、平和条約締結後に歯舞・色丹の2島を日本に引き渡すと明記したが、膠着状態が続く。2016年12月の日口首脳会談では北方四島での「共同経済活動」の実現に向け協議を始めることで合意 (c)朝日新聞社
北方領土問題/第2次世界大戦末期、当時のソ連が択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の4島を占領。1956年の日ソ共同宣言では、平和条約締結後に歯舞・色丹の2島を日本に引き渡すと明記したが、膠着状態が続く。2016年12月の日口首脳会談では北方四島での「共同経済活動」の実現に向け協議を始めることで合意 (c)朝日新聞社

 サッカーW杯の舞台ロシア。日本の隣にある大国だが、あまり知らない顔を持つ。国際政治でも大きな存在感を示すこの国は、いまどうなっているのだろうか。

*  *  *
●Question1:北方領土はどうなる?

――5月26日に開かれた日ロ首脳会談では、北方領土問題について話し合われたが進展はほとんどなかった。何が、問題解決の進展を阻んでいるのだろうか。

 まずは最近急速に悪化している米ロ関係がある。プーチン大統領は3月1日の年次教書演説の中で、異例の約40分にわたり新型兵器を紹介した。これは反ロ姿勢が変わらないトランプ政権への「決別宣言」だ。

 これが北方領土問題にも影響を及ぼしている。ロシアはかねて、1956年の日ソ共同宣言にあるように歯舞、色丹の2島を日本に引き渡したとしたら、そこに米軍基地が置かれるのではないかという懸念を示してきた。米ロ関係の悪化で、米軍の展開阻止についてのロシア側の条件も変わってきたと言える。これまでなら日本側は、首相が口頭で「米軍は展開しない」と言えば十分だったが、今後は文書まで求めてくることになるだろう。これは日米関係においてはのみ込みがたい話。北方領土問題解決のハードルは上がったと言わざるを得ない。

――実は現在の国際政治情勢は、北方領土問題を動かす好機でもあったと、佐藤氏は見ている。

 北方領土問題などで日ロ関係が動くときは、別方面でロシアがうまくいっていないとき。クリミア併合やシリア問題を巡り、欧米と対立するロシアは国際的に孤立している。

 ロシアがもし北方領土返還で平和条約を締結すれば、一方で国際的に批判を浴びているクリミアをロシア領と認めることを日本に迫ることもできる。一見無理な話のようだが、日本政府は、「クリミアが不法占拠であることは日本政府の周知の立場だから繰り返す必要はない」と説明する。一方で平和条約の中に、「双方の領土保全を尊重する」という合意を盛り込み、ロシアが実効支配するクリミアを自動的に認めることもできる。

 だが、こうしたすり合わせも今回の日ロ会談ではタイミングを逸したようだ。交渉を進めるには政治の安定が前提だが、ロシアは日本が思っている以上に安倍首相の権力基盤が弱いと考えている。今秋の自民党総裁選までは様子見になるだろう。

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