●Question2:北朝鮮問題でロシアは?

――5月の日ロ首脳会談では北朝鮮の非核化を目指すことで一致した。米朝首脳会談が行われる一方、北朝鮮問題におけるロシアの影は薄いようにも見える。今後、関与を強めてくるのか。

 これまで金正恩朝鮮労働党委員長は3回も訪中しているが、ロシアとはまだ首脳会談をやっていない。本音のところで金氏はロシアを必要としていないのだろう。なぜならトランプ大統領との交渉において中国の習近平国家主席は仲介できるけれども、関係が悪化しているプーチン氏はできないからだ。

 北朝鮮からすればロシアからの莫大な経済援助が期待できるわけでもないし、プーチン氏としても、今は中東方面で手一杯だというのが実情。とはいえ「板門店宣言」で合意された平和協定への協議からロシアと日本は外された格好であり、プーチン氏はそれを不愉快に思っているはず。何とか存在感を示し、イニシアチブを発揮する策を練っているだろう。

――ロシアのラブロフ外相は9年ぶりに訪朝。その際、プーチン氏からの親書を金氏に手渡し、9月にロシア・ウラジオストクで開催される東方経済フォーラムにあわせてロシアを公式訪問するよう要請したという。

●Question3:中東における狙いは?

――ロシアと欧米との関係悪化に拍車をかけたのがシリア問題。シリアのアサド政権を支持するロシアと、反アサド政権でまとまる欧米との対立は、亀裂が深まっている。

 今、シリアという国家は事実上存在しておらず草刈り場と化している。ロシアとしては、このままイランとトルコに席巻されてしまうのを避けたい。イランが勢力を増すと、シリアの隣国イスラエルとの関係が緊張するのも困る。そこにはエネルギー政策で協力関係にあるサウジアラビアがイスラエルを支持しているという絡みもある。

 基本的にロシアは、中東が混乱して米国の影響が弱まっている間に、極力有利な方向に持っていきたいというのが狙い。米国がイラン核合意から離脱したことも、ロシアとしては歓迎しているはず。米国によるイランへの経済制裁が再開されたことで、原油価格が上がった。産油国でもあるロシアとしてはプラス面がある。そういう意味でロシアの中東における動きは政治的なものではなく、経済的で現実的な路線だ。

――経済的という点では、シリア内戦がロシアにとって好機ともなっているという。

 石油・天然ガスの輸出に頼ってきたロシアは、シェールガス革命などによる原油価格の下落やクリミア併合後の経済制裁などの影響で相当なダメージを受けている。自然と軍需産業による外貨獲得へ傾く可能性が高まる中、ロシアの兵器が中東で売れている。ロシアの兵器は米国産に比べて安いし、デリケートではないから温度差や環境にも強い。今回シリア政府軍にロシア軍が提供した地対空ミサイルSA22は、トラックに載せられて、千手観音みたいな手から一斉に水平射撃できる。それを世界中に実戦披露している状況だ。

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