脱会によって家族と断絶するケースも多く、その場合、生活基盤を失ってしまう。そのため、葛藤を抱えながら教団にとどまっている2世も多い。

 父親の理不尽な抑圧に耐えながら生活していた地方在住の旧統一教会2世の女子高生は、高校卒業直後に行われる合同結婚式への参加を迫られ、すべてを捨てて家出する決心をした。実行に移す直前、祖父から支援の申し出があり、東京の大学に進学。父親から離れることができた。

●オフ会で飛び交う教団用語「誰にも話せなかった」

 2世問題は、「居場所」「逃げ場」がキーワードだ。自分の居場所や逃げ場を見つけられない2世の「難民化」が懸念されている。

 昨年7月、二つの教団の2世の集まりを取材した。エホバの証人の2世約100人が集う大規模オフ会「夏オフ」では、談笑する参加者の間で「どこの会衆?」「私も排斥されました」「王国会館売却だって」と、互いにしか通じない教団用語が飛び交った。

 旧統一教会2世が主催したイベントでは、それまでツイッター上で会話していた十数人が、初めて顔を合わせて語り合った。「今までこんなこと誰にも話せなかった。誰にも分かってもらえなかった」と堰(せき)を切ったようにあふれ出る感情を共有する2世たち。

 同じ境遇に生まれ、同じ葛藤に苦しんだ2世同士の交流は、彼らに共感と癒やしを与えていた。

 悩みを抱え込む2世にとって、家族の中でその団体の教えに染まっていない人の存在や、信頼できる人からの理解や支援、そして同じ境遇に生まれた2世との交流など、安心できる「場」の確保が何よりも重要だ。

 旧統一教会の30代の現役2世からは、興味深い話を聞いた。教団から離れている2世と教団や親に従順な2世が集うイベントを何度か企画しているというのだ。1世の場合、脱会者と現役信者が語り合うことは、まずありえない。しかし、同じ境遇に生まれた2世同士では、それが可能なのだ。

 この交流オフ会は、悩みを抱える現役2世の居場所にもなっている。

「教会には行かないけど2世の集まりには行きたいという人は多いんです」

 こうした交流オフ会での2世の動きについて、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に見解を尋ねると、「新宗教の2世を特別視し、特有の問題があると決めつけることは、平穏な生活を送っている信仰を持つ多くの人々に対する差別を生みかねません。そのようなことが起きないような社会作りにご理解と協力を頂ければ嬉しく思います」との回答があった。(ジャーナリスト・鈴木エイト)

(※)カルト 本来は「儀礼・崇拝・熱狂」などを意味する言葉。欧米では、精神操作を用いてメンバーに反社会行為を行わせる団体を「破壊的カルト」と呼ぶ。日本脱カルト協会は「カルト」の定義を「組織に依存させて活動させるためにマインドコントロールを用いて個人の自由を極端に制限する全体主義的集団、人権侵害の組織」としている

AERA 2018年6月11日号