「前作に続き、いちから舞台をつくるところから参加できたので、稽古もすごく楽しかった。猿之助のお兄さんは、すごく挑戦している人。憧れますね」

 父の幸四郎もコミカルな演技で、会場を何度もどっと沸かせた。舞台の上と普段の父の姿とでは違いがある? と聞くと、

「弥次喜多に関しては、ほぼそのまんま」

 と笑う。取材に同席した母・園子さんも、うんうんとうなずく。歌舞伎の世界では厳しい師匠でも、家では「面白いお父さん」と過ごす、温かな時間があるようだ。

 好きな音楽は「マイケル・ジャクソン」。世代的にはだいぶ離れた答えが返ってきた。聞けば、きっかけは吉本新喜劇。携帯電話の着メロでマイケルの曲が流れ、出演者が気分よく踊り出す。が、盛り上がったところで音が切れてしまい一同ずっこける……というネタを見て以来、ファンになったのだとか。

「ムーンウォークも、一応できます(笑)。父がラスベガスの公演(『KABUKI LION 獅子王』)でムーンウォークをした時に、家で一緒に練習したんです」

 将来の目標は、「勧進帳」の弁慶を演じること。しかも、白鸚の祖父・七代目幸四郎が打ち立てた1600回公演という記録を塗り替える、と夢は大きい。

「弁慶は子どものころからの憧れの役です。特にきっかけがあったわけではなく、高麗屋に生まれたから自然に好きになりました。弁慶は、見た目は大柄で強そうですけれど、義経を守ろうとする優しい心の持ち主。そういうところにも惹かれます」

 歌舞伎役者になっていなかったら画家になりたかった、と言うほど絵が好き。ただ、描くのは、どれも歌舞伎の役の絵。中でも弁慶の絵は、数えきれないほど何度も描いた。

「曾祖父の初代白鸚がすごく絵が好きで、僕はそれを絵が好きになった後に知ったんです。血を受け継いだのかもしれません。絵を描くときは、昔の写真とか調べます。衣裳の柄とか、人によって化粧の仕方が違うとか……いろいろ勉強になります」

 勉強熱心なんですね。そう声をかけると、この日一番まぶしい笑顔でこう返した。

「はい、歌舞伎のことだけは」

(文中敬称略)(編集部・市岡ひかり

AERA 2018年6月11日号